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Masel Tov Cocktail(原題)
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『Masel Tov Cocktail(原題)』に投稿された感想・評価

主人公はユダヤ人。彼はロシア出身のドイツ市民だ。ソ連崩壊時(罪の償いのために)難民として迎え入れられた。ドイツの90%のユダヤ人がそれにあたるらしい。
テーマはアイデンティティゆえのステレオタイプに押しやられること。主人公の家族はホロコーストを経験していない。しかしガス室をネタにした差別的ジョークを浴びせられたり、逆に「被害の物語を語って」と哀れまれ/持ち上げられたり。「イスラエルに行ったことあるわ。素敵な所よね」「いや、僕そこ行ったことないんで」(相手は聞いてない!)と型に当てはめた一方通行のやりとりが主題をよく表していた。当事者の声は聞かれない。なぜなら被害者像に当てはめられているから。彼の家族は赤軍にいたのにもかかわらず。

彼の祖父は結婚相手をユダヤ人にするよう説得する。反ユダヤから逃れるために。ドイツ人の同級生は「ぼくの家族にナチはいなかった」と弁明し始める(69%のドイツ人は、自分の家族についてユダヤ人を迫害しなかったと信じている。29%はかくまうなどして助けたと信じているが、そのような人は実際に0.1%もいなかったそうだ)。主人公は「自分は悪くないってことを言い続けなきゃいけないなんておかしいよ。彼が悪くないのは当然じゃないか」と言う。
ドイツでも自虐史観から脱出する動きってあるんだなと知った。教育を通じて自分の国が何をしたのかについて反省してたイメージがあったけど、難民排斥を掲げた極右政党の支持率が伸びているらしい。https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/080100382/
自分が生まれる前に、自分の国が何をしたのかについて何世帯に渡って反省し続けなくちゃいけないのは不愉快だろうと思う。それでも見たくない、知りたくない不都合な事実に向き合わないことは(そして隠されることは)また同じ歴史を辿りうるということだ。「そうネオナチが出てきてる。でもみなさん、自分とは関係ないと思ってるんでしょう?」
作中でafd(ドイツの極右政党)はユダヤ人である主人公に「アラブ系反ユダヤ主義と戦おう」と呼びかけることの皮肉。それは憎しみの相手だけを変えて同じ歴史を繰り返すことだ。それに自衛の思いから応えようとする主人公の祖父。「俺たちイスラエルの発明をアラブ人が盗んだんだ」とレバノン料理屋のアラブ人店員を目の敵にする主人公の友達。特定の人種への加害は繰り返さなくとも、新しい共通の敵が生まれる。