梅田のマズラみたいな踊り場が素敵

邦題は『三百万裁判』。コメディであり、階級批判でもあるが、他方で「野暮で無能な泥棒(Тапиока) ⇄ エレガントで洗練された怪盗(Каскарилья)」という判りやすい構図のエンターテイメント・アクションが、「資本家からルーブルを解放せよ、人民に還元せよ」という政治的宣言に収斂する様が強烈で情熱的なカタルシスを感じた（現代においては、単なるマルクス的集産主義だと批判されよう。あくまでも映画としての面白さである）。

IMDbではこの映画を『Three Thieves』として紹介しているが、実際に資本家を「3人目の泥棒」と定義している点は無視できない。一見して「人民からルーブルを搾取する悪辣な豚」と理解してしまいがちだが、残念ながらこの映画内ではその正当性──人民が資本家よりも善人で正直である、という証左──らしきものは描かれなかったのが残念ではある。

それを差し引いても、1926年に斯様な傑作が産まれたことは、監督・脚本のЯков Протазановの才能であると評価をせざるを得ない。