やまけ

アメリカン・ユートピアのやまけのレビュー・感想・評価

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)
5.0
本作の特筆すべき点は、高度に咀嚼されたメッセージである。
「新聞を読め、ニュースを観ろ、政治に関心を持て」といった短絡的な啓発は、ともすれば発信する側の自己満足/受け手への丸投げにもなり得る。
しかし本作におけるバーンは、「ややこしいことは一旦抜きでとりあえず一歩目を踏み出す」ことを勧奨する。
その一歩とは、「選挙に行って投票する」という至極単純なものである。
この平易なメッセージを丁寧に、かつ楽しく提示することによって、オーディエンスと政治参加の間に横たわっている距離がぐっと縮むのが感じられた。

メッセージの易しさに加えて、ライブとしての高い完成度にも言及しておきたい。バーンと多国籍バンドのパフォーマンスは目を見張るもので、音楽的な楽しさと社会的なメッセージ性のバランスが終始絶妙に保たれ続けていた。

劇場の数や上映回数も限られているようなので、気になっている方はお早めに検討されることをおすすめします。
やまけ

やまけ