麩

静謐と夕暮の麩のレビュー・感想・評価

静謐と夕暮(2020年製作の映画)
2.9
京都造形大学の映画学科の卒業制作
卒制がシネマロサで1週間上映され、
海外で賞を取ったり関西で上映されたりと
すごい作品

めちゃくちゃ挑戦的というか、題名の通り静謐で、美しい映画だけどごりっごりに攻めてて気持ちいい。

・136分ある
・台詞という台詞が前半まったく出てこない
後半も殆どない
・インサートがめちゃくちゃ多く、そのうえ時系列も複雑
・生活音として流れるラジオや周囲の話し声、だけにとどまらず…「役」がしゃべる台詞さえもがぼそぼそと聞き取りづらい
・作品の中で重要な要素となる原稿の束や手紙は映るのに、文字がぎりぎり読み取れないくらいの感じでうつす
・山本真莉さん演じる主人公に台詞がひとつもなく、すべて表情と身体での芝居
・画面左下にちらっと目があるカットとか、
仰向けの泣き顔を足下側から映すとか
面白くてアーティスティックなカット多い
・とにかく説明がない 徹底的に説明を省いており正直ストーリーの流れが殆ど掴めない

あんなに静かで美しく、穏やかなのに
やってることも姿勢も面白すぎて凄いなーー
こんな攻めた作品は自主でしか作れないなぁ、、すごい
長いし、わかりにくいから終盤退屈するのは正直あったけれど
エンドロールと共に種明かしをしてくれるのとか
後半、前半でわけわからなかったシーンが意味をもってバンバンきまってくる感じとか
気持ちよかった
この気持ちよさに頭まで浸かれるのは映画館ならではだと思う、家でスマホサイズでは絶対に退屈してしまう…悪い意味ではなく、サブスクがここまで発達した今、映画館でしか出来ないぼんやりした時間って本当に贅沢だし
微睡むような退屈を楽しめるって体験はいま一番貴重なものだとおもう
行って良かった

そんでなにより夏の京都、美しい
親子が線路下の川で釣りをしてるのを背中側から映してて
電車が走ってくるのに合わせて、右上に映ってる橋の欄干に光が射して
ぱらぱらぱらぱらって1本ずつ
黒から白へ変わっていくカット(説明下手すぎる)
あぁーーー気持ちいいーーーーってカタルシスを感じるほどの美しさと不思議な懐かしさだった

夏の夜に、ひとりきりでまた観たい
麩