サーシャ

マスター 先生が来る!のサーシャのレビュー・感想・評価

マスター 先生が来る!(2021年製作の映画)
4.5
IMWで一度だけ視聴し、再上映や円盤化を切実に願っていたらまさかの全国上映です。パンフも非常に丁寧で愛に溢れていて、Space Boxさん本当にありがとう!

私は「マーリ」で初めて出会った天才ロックスター、アニルドくんの音楽のファンなので、クソデカスクリーンで改めて浴びるアニルドくんの殺意つよつよな音楽にマジ泣きしながら音を立てないようにこっそりと拍手喝采していました。「お前を葬る準備はできた」とか「切り刻んでブチまけろ」とかそんな物騒すぎるフレーズそうそう聞かんぞ。

物騒ではなく「ささやかな話を聞いてくれ」と少年院の不良少年達に歌い聞かせる「Kutti Story」も素晴らしいですが、公式サイトのあらすじにもある例のシーンでいかにもみすぼらしい少年達が「僕達がろくでなしだから」「チャンスがあったら良い子になりたかった」と歌う弔いの歌は、多分何度聴いても号泣するでしょう。

ストーリーは「大学の学生達から絶大な信頼を寄せられ慕われている先生が少年院に赴任させられるが、そこでは巨悪が蔓延り少年達を薬漬けにし犯罪に加担させていた」というものです。先生が少年院に赴任させられる過程もヒロインの言い分もさすがに理不尽すぎて納得いかないし、IMW以来久しぶりに観たら記憶の三十倍くらい最初から最後まで暴力の嵐で、「インド映画、なんでそう何でもかんでも暴力で解決しようとするの……?」と、私自身はそういうのが好きだからハッスルできたものの、苦手な方はご注意ください。子供がひどい目に遭う描写もありますので本当にご注意ください。

しかしこの作品、特筆すべきは主人公のアル中先生JDと悪役のボス、バワーニの対比でしょう。本当にバワーニは「いや待ってお願い待ってそこまでするんか!? やめたげてー!!!!!」ってくらい女子供関係なしにひどいことしまくりますが、この少年時代を経てきたならばまあそれなりに情状酌量の余地があるのかな……と納得するしかないけど納得したくはない過去が丁寧に語られます。

底辺で這いつくばいながらどうにか生き延びて成り上がり、部下達に恐怖政治を強いることになったバワーニと、過去にいろいろあってアル中と化しても学生達に慕われて虜にできる先生。どちらの視点で観ても「Kutti Story」の「人生は短い 幸せで行こう」の歌詞が心に響きます。バワーニも、少年期に先生と出会えていたら……きっと……。
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