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レミニセンスのQIのレビュー・感想・評価

レミニセンス(2021年製作の映画)
3.5
“プロモーションの悲劇”

制作:ジョナサン・ノーラン
監督・脚本:リサ・ジョイ(ジョナサンの奥さん)

と聞けば、誰もがノーランブランド作品のイメージを持つはず。

さらに予告編もなんとなく『インセプション』を思わせる見せ方になっていることが、この作品の悲劇の始まりです。

実際は完璧といっていいほど「フィルム・ノアール」の様式に沿って作られた作品。

「SFサスペンス超大作」と銘打っていますが、SF色は設定上の味付け程度。

おまけにハリウッドでは標準的な制作費で作られた本作を「超大作」というのは誇大広告では?

そんな先入観を除いてその様式を前提に鑑賞すれば、なかなかどうして、よくできた作品だと思いました。

「フィルム・ノアール」作品に必要なディストピア感も、地球温暖化による海面上昇、さらに貧富の差という現代社会が抱える問題にアップデートされ、その映像表現も美しい。

特にファーストカット

主演のヒュー・ジャックマンが登場するまでのワンカット撮影で、その世界観は観客にわかりやすく伝わります。
(IMAXで観てよかったと思ったのはこのシーンだけw)

わかりやすいのは映像だけでなく、脚本も同様。

起きる出来事の説明がその都度されて、謎を追いかけるストーリーと最後の伏線回収に集中することができます。

ノーランブランド特有の難解さを想定して観ると、そのわかりやすさを素直に受け入れられず「何か意味があるのでは…」という考えに囚われて、かえって混乱するかもしれません。

ヒュー・ジャックマンも存在感も本作の見どころ。

『ウルヴァリン』や『グレイテスト・ショーマン』を思わせるシーンもご愛嬌w

そしてなんと言っても、未来に希望を持てなくなった世界で、男性は過去の記憶(レミニセンス)にすがって生きるのに対して、女性は未来を見つめて生きようと努力する姿を対称的に描いているのは、リサ・ジョイという女性監督ならではの視点だと思います。

そんなシンプルな見方で、ファム・ファタールとしてのレベッカ・ファーガソンの美しさを素直に堪能できましたw

p.s.
ポスタービジュアル
オリジナル版を見る機会がありましたが、日本版は明らかに『インセプション』のイメージに寄せています。
配給会社さん
これを含め、今回のプロモーションの仕方はホントにやりすぎじゃないですかねぇ🤨
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