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無法のバッヂ
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『無法のバッヂ』に投稿された感想・評価

犬
3.3


銀行強盗のメイビーは、保安官に追跡される途中、保安官が誤って崖から転落して命拾いする
その保安官の馬とバッヂを手に入れ、近くの町へやってきたメイビーは、町の顔役である判事に本物の保安官だと勘違いされたことから、正式に町の保安官として雇われることに
そこへ彼の本性を知る昔の恋人や別の強盗団がやって来て……



別人に
それぞれ

銃で


展開はどうなるか

アクションあり

判事も印象的です
 ウォルター・マッソーが豪快な判事役を生き生き演じていて実に気持ちが良い。停留させた小舟の中に住んでいたり、素肌に法服で裁判始めたり、面白い。
 脚本を手掛けたのはボーデン・チェイス(『赤い河』)。タイトル通りツイストの効いた物語で、オーディー・マーフィーとその偽の妻ジア・スカラ(ちょっと演技が拙い)の関係はもうちょっと細やかに描いてほしいと思うが、エディー・リトル演じるJimmy少年に関する描写はなかなか沁みる。

 しかしなんといっても白眉はヘンリー・シルヴァ演じる悪役をオーディー・マーフィーが追いかけるうち、牛の群れの中でふたりが対峙するシーン。牛がスタンピードを起こさぬよう、のそのそと逃げのそのそと追う、その遅さが忘れがたい。
4.0
 こんなのを見ると今のアメリカ政治が国際法なんぞと無視してかかる気分がどんな心持ちから起こるのか分かる気がする。

 ついこの間までただの川っぺりの草っぱらだったところに船が泊って市がたって人が棲みだす。周りは誰もいないからしたい放題だ。人が集まれば悪さもはびこる、それで評判が落ちれば商売は上がったり、司法も警察も手が足りないんだから弾が当たれば銃殺刑、外れりゃあ絞首刑の即決、これを判事がまとめて手を下してくれるなら実に手っ取り早い。
 これは、この地じゃ撃つ側、撃たれる側の二つしかないとの積りなら分かりやすい。ところがそこにどちらかあいまいな奴、怪しいのに名保安官ヌーナンらしいのがやってきたので撃つ側判事がたたらを踏むことになる。ついでに判事はのべつ酔っ払ってる不良で、それでいて本当に二分法で切り分けるから敵へ味方へコロコロ扱いが替わってしまう。こんな奴いるかと思うがトランプみたいな統領が現にいるのだから、W・マッソウで判事ならそうなんだ。これから「ベアーズ」まで酒が抜けないんだろう。
 今のアメリカも自陣営と非米陣営に世界を割ってはなしを分かりやすくしようというのなら、マッソウ判事の鉄砲判決と何も変わらない。それが、怪しい奴(現に怪しい)→保安官(ニセ者)→再び怪しい奴(強盗野郎、泳がして一網打尽かよ)→保安官(本物。なにせ判事が任命するのだから)と判事ひとりで四審まで務めるのか?アメリカ司法史に残るだろう。しかも、旧悪は司法の判断でチャラになって、実は此度のドタバタはメイビー保安官と俺の狂言でティーラー一味を嵌めてやったのさワハハで済んでしまうに違いない。

 おかげさまで面白かった。判事の法服の袖の広いのは酒瓶を持ったまま着られるようになってると初めて知った。その判事、なんで撃たれたか、この保安官野郎がどこのどいつかも覚えてない判事が万一素面の時も酔いを忘れないようにユラユラとボート暮らししているのも可笑しいし、ニセ保安官と小間使い小僧ジミーのお互い悪所育ちの通じ合いもどんなご縁で、という感じ。このジミーに大学だって行けと頭取は云うが判事はそいつが気乗りでないらしい、そんな具合に整理整頓された人間がそぎ落としてしまうものを惜しむようなところがあるのだろうか。女狐風テッサもまた、前の街でメイビーにふられた腹いせが胸につっかえてるニセ細君役がタヌキな感じでよい。
 いつか二人の化けの皮が剥がれるかもしれないが、アメリカの広野の地の底には昨日の敵同士をして一緒に西部劇ショーで資本主義させてしまうような怪しいものがのたくっている気がする、だからふたりもどうにかなって、東部の出版社から執筆依頼でも来てあらためて人気者になってしまうかも知れない。俺の事も上手く書いてくれよなと思えば知らぬ昔の事なんかみんな蹴飛ばしてしまうだろう。

 とはいえ、この河港都市にも鉄道が来て人が増えれば街の重みも増してゆく。議会が開かれ行政が成り立ち、商工会やら組合やら圧力団体の数もそろって鉄砲判事の剛腕も黙る頃合いを迎えるのだろう。それとも牛の輸送が産地から都会に直送されて町も寂れて元の草っぱらに戻るかも知れない。わずかになった住民の間でにぎわった昔、とんでもない判事と保安官がいてどちらもインチキだが悪事もぴたりと止まってと語り継がれる、なんてのがいいんだなあ、大きなお世話だろうが。