しん

とんびのしんのレビュー・感想・評価

とんび(2022年製作の映画)
2.0
新型コロナウイルスに感染し、10日間の自宅隔離をNetFlixで過ごしたのですが、やはり映画館はいいですね。渇望していたのが分かりました。

さて本作は原作があるので、ある意味仕方ないのですが、「寡黙で手が出てしまう不器用な伝統的父親像」をノスタルジックに想起することは、やはり子どもの福祉や権利を考えるならば、良いことばかりではないなと実感しました。

本作は子どもの成長物語になっていますが、それは子ども側が好意的に回想することで成立しており、子どもが相当の読解力(と共感力)を持っていなければ父親の「真意」は伝わらなかったでしょう。その原因は当然に父親側にあります。「できの悪い父親」という言い方で、それが許容されてしまっていいのかは、甚だ疑問です。

そして自分の子どもに体罰を叱っておきながら、自分は部下や目下の人にも手を出している様子は、どう正当化できるのでしょうか。これも周りが(過剰に)受け入れてくれているから成立している構図であり、しかもそれに反省がないのはなかなか受け入れづらいのではないかと思います。

また荷物が落ちてくるシーンや、阿部寛が自分を殴るシーンなど重要なシーンが細部で臨場感に欠けており、そこもマイナスポイントでした。阿部寛の演技も少しくどかったなと思います。

こういった価値観が「昭和」のものとして駆逐されていくのは重要なので、そういった批判的視点から見るにはいい作品でした。
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