このレビューはネタバレを含みます
地下鉄サリン事件の被害者である さかはら監督が、オウム真理教(現アレフ)の広報 荒木氏と対峙するロードムービー型のドキュメンタリー。
奇しくも同郷であり、同時期に京大生であった両氏。故郷の丹波地方や思い出深い土地を巡る中で、荒木氏は過去や自分と向き合い、心の中を晒していく。
他愛のない話に興じる2人はいい顔で笑う。長年、親交を深めた友のようですらある。
だからこそ、さかはら監督から荒木氏に対しての言葉は柔らかくもあり鋭利でもある。
自分にしか作れない作品を作るにあたって、被害者としての視点はとてつもなく鮮烈で残酷。客観性を排しつつ、真実を知り、伝えるという一点に集約された語り口は見応え充分だった。
荒木氏にとって絶対的な存在が、悪であった事実が理解できても口にできない公式な謝罪。
それをしてしまったなら、自分が瓦解してしまう事を知っている。
良し悪しは別にして、その胸の内まで解ってしまう寂しさがいつまでも残った。