"For Autumn."
誕生日に親にせがんで円盤を購入、その後TSUTAYAのレンタルに来ることを知ったが、買う価値は十分にあった。
公的に喋る時のDCEU史上最高傑作(私的に喋る時はザ・スースク)
DCEUの代表的なチームヒーローを描くザック・スナイダーの復活作は4年間にも及ぶ期間の末に、歪な2017年版から大きく完成度が向上した。
夢の詰まったアメコミ的ビジュアルに加え、ザック印の押された黒を基調とするシックな色彩感覚や絵画的かつ神話を思わせるショットの数々の前に観る者の眼福は頂点に誘われる。
1作目の「アベンジャーズ」同様、どっしりと構えた冒頭から徐々に観客の心拍数を上昇させていく構成。大きく違うのは各キャラがそこまで作り込まれていない点だが、4時間という上映形式とチャプターに分ける事により物語の渋滞を鮮やかに回避し、「アベンジャーズ」と同等の高揚感を実現させた。(いや、なんなら上回ってしまったと言っても良い。)
ディズニーという枷にかけられ、その中で戦うMCUとは違い、DCEUのエグさを咎める者はいない。
そんな中にスナイダーという男を放り込んだらどうなるかは自明の理であろう。
その血みどろアクションを目撃せよ!神話的なビジュアルを有していながら生身の肉体であることを血によって意識させる事でリアルという"地"に足をつけさせる。
1章に1つは今までのDCEUで観てこれなかったアクションが観れるので単純にジャンル物としても優れている。
上映時間を支持と信頼でカウントブレイクさせた為、キャラクターも充実した形で一新された。
足手纏いに近かったベンアフバッツは監督役として、地球人代表としての顔を全うし、最もフィジカル的に弱くありながら最も生かしたダークヒーローとしてスクリーンを駆け回る。
MCUがナノテクで全て解決し始めたこの時代に、ガチャガチャ感あるガジェットをしっかり提示してくれる最高さよ。
ダイアナも身体性というプロポーションだけで無く、喪失を抱えた孤独な戦士としてWW1984とはまた違った側面を魅せた。(しかし1984と辻褄を合わせづらい部分もあり。マルチバースだと思おう!)
素早く且つ重い、序盤のアクションがベスト。
無理な深みを足そうとして浅瀬で溺れたアクアマンはフェロモンをムンムンに漂わせる孤高の英雄としてカムバック!(彼だけではないが特に彼が)ザック先生の肉体フェチっぷりを何度も再確認させられる要因
単独作のダサめコスチュームから、抑え目ながらにゴージャスなものにチェンジ!
アトランティス人がより海底人らしくなったのも超加点ポイント
髪がボサボサなのが最高
DCの持つ神話性が苦手な人もご安心、普通の世界を生きようとするフラッシュをよりブラッシュアップした状態で出す事で、民話性も完璧にカバー
タイムスリップや逆行までしてしまえるとんでも設定が追加されたが、それでも「目の前の現実」を観続けるという成長の物語を組み込んだことにより批判点をしっかりとカバー
ステッペンウルフにはロキのような下っ端としての側面が追加された事で、ただのダサいマザコンから、暴力性を振りかざす苦労人にクラスチェンジ
PS2の悪役のような「ザ・悪役」な台詞の数々も、人物の芯の通った物として耳に入った。
数々のキャラクターが進化を遂げる中、サイボーグだけが唯一普通な印象に終わってしまった。彼の機能についての解説パートは少し長すぎであろう。
マザーボックスと対面するクライマックスは唯一素晴らしかった。
数年後には劣化するであろうCGごった煮の映像には食傷してしまったし、小さい画面で観たからギリギリ許容できたが、無際限に広がるパワー表現にはもうお腹がいっぱいだ。
ブルースとクラークの人物像と関係性を前作でもう少し深められていたらという部分も指摘せざるおえない要素でもある。(ディレクターズカット版を観ていない人にとっては)
それにクラーク・ケント:スーパーマンへの世間の評価が2017版とほぼ変わっていない(序盤で突然ヘイターの存在が消えている、そして復活して急に石碑の所で出てくる)という問題点は正直目に余る。
それに彼は、MoSで2人の父親の間で葛藤した結果、「力をひけらかし、無罪の一般市民を大量に巻き込む」という最悪の決断をしてしまっているので個人的にはそのイメージがあまり払拭されなかったのは残念
しかし「ワンパンマン」のサイタマ的な来てくれた時の安心感は半端ではない。ブラックのスーツに身を包んでからの、お決まりのキリスト(十字架)ショットもコテコテすぎるけど好評価
壮大な神話ヒーローの序章であったが、続きが作られる可能性が低いので、このレベルの熱量はもう観ることができないのだろうなと少し悲しい気持ち。
しかし、それで冷めるほどの映画ではない。
個人的にはダークサイド以上にバットマンとジョーカーの共闘を見てみたい。ジャレット・レトーの肩書きが「たった10分の登場時間でジョーカーを史上最高にダサい悪役にした男」から「たった5分の登場時間で歴代と渡り合える実写ジョーカーを作った男」になっていて笑ってしまった。
世界観にハマれないことも、監督のスタイルにハマれないことも、メッセージに対して完成度が担保されていないことも、母親の名前が同じだけで戦いを止めるような興醒め展開も全くもってない!
全シーンにザック・スナイダーという男のビジョンが行き渡り、活き活きとかつ流動的に繋がっていく。
壮大な尺と世界観、攻防の末に出される娘様への素敵な餞…ここからは僕の語っていい事ではないですね。
大味さは何だっていい。
とにかく最高な映画だ。