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映画検閲のhidehiのレビュー・感想・評価

映画検閲(2021年製作の映画)
4.1
2024/9/9 鑑賞。
映画には長編小説的な発想のものと、短編小説的な発想のものがあると思う。長編小説的、というのは、いくつかのストーリーラインはあって、ちゃんと"謎"には片を付けるタイプ。短編小説的、というのは、必ずしも"方は付けず"に、特異な出来事を強烈に追体験させる、とか、または話の切れ味を重視して特化したもの、とか。クリストファー・ノーランで言えば、前者は『バットマン』サーガとか『テネット』とかで、後者は『メメント』みたいなかんじ。
この映画はまったく短編小説的で、主人公が狂っていく過程を追体験することが主眼。もう最後はおかしくなっているわけだから、どこまでが事実だとかあまり関係ないんだと思う。だから"片が付かない"まま終わるし、最後のシーンは、観客にそこから帰ってくる(EJECTする)ための仕掛けなんだと思いました。
誰でもけっこう強い後悔をもって「あの時こうしておけば」的な出来事ってあると思うんですよね。(たとえば、変な遊びを考えてちょっと意地悪したばっかりに妹が行方不明になってしまった、というのは、友達を、明日大事な試験が、と言っているのに「大丈夫大丈夫」なんて言って無理に飲み会に誘って、結果のその友達が留年してしまった、というようなことと同じと言えば同じことではないか、そんなふうな経験は誰でも何かしらあるのでは、ということ)主人公の後悔のもとになっている出来事があまり明確に語られないのも、観客にそれぞれそれを代入してみてほしい、ということなのか、と。
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