狩野ネム

Arc アークの狩野ネムのネタバレレビュー・内容・結末

Arc アーク(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

友人の薦めで同時視聴

リナの姿が変わらない期がモノクロで表現されているのは主人公の思考の停滞を表してるのかなって勝手に思ってた。作品内の言葉を借りるなら罠にかかっている状態。
それが息子の一生を受けて自分なりの答えを出してのラストに繋がったと思った。

エマと天音が同じ人の死の影響を受けて全く違うアプローチをしていくのが印象的だった。エマは天音の描く未来を「罠」と評するわ天音がエマの表現を認めてる描写もあるわで2人の表現を単純な対立で片付けずに深みを持たせていたお陰で妄想が捗った。
天音が描いた世界でもプラスティネーション技術は形を変えて残っていたのがとても好き。

プラスティネーションを依頼する女性の「もうこの世にいないって分かってるんです…」みたいな言葉が印象に残っていて、元々の動機が母が腐らなかったらーというものなので自分が目指したものの理由もどきを他人から聴かされるのはどんな気分だったんだろう…という気持ちに。

中盤は愛する者との別れ。
恨み節も無く強く生きてく様は会見で啖呵を切った時の強さが見れてカッコよかった。

後半は自分が捨てて不老不死を選ばなかった息子の一生が丁寧に描写されていく。施設に来てすぐに(不老手術反対派の)エマの(不老派には価値の無い)カメラを手に取る辺りが本当に上手い。妻が旅立つ前の肩を預けたり直前の車椅子で雪の中を走り回る2人の姿が心の底から満足そうであんな生き方をしたいなと自分も心揺れ動いた。

最後にリナは老いる道を選ぶのだが、この辺りは不老不死を捨てて愛した何かと添い遂げる神話やファンタジー的な表現を感じた。

火の鳥的な"死んでも死ねない"ではなく自殺という逃げ道があるのなら私は不老手術を受けてもいいのかなと思った。という訳で自分が1番共感したのは自殺した人たち。

後半が時間の割に話が進まないので余計な事を考えると点数が下がっていきそうなのは分かる。自分はこのレビューを書いていくにつれて点数が上がっていった。
狩野ネム

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