決してキラキラした恋愛映画ではありません。
人怖映画です。
男に振られたから彼女を寝取ってやろうとする、ヤバい女子高生が主人公です。
原作者である綿谷りさ先生の作品は、拗らせ女子を描いたものが多いが、今作の山田杏奈演じる愛はその中でも頭ひとつ分抜けているような気がした。
この映画が、ドロドロになってもおかしくないはずなのに、妙に爽やかな印象を受けてしまうのは、おそらくこの愛の突き抜け具合「イキっぷり」のおかげだろう。
愛は、わがままで、欲深く、自分の欲しいものを手に入れるためには手段を選ばないような性格をしている。
愛の行動には、正直共感しにくい部分がある。面食らうというか、ワンテンポ遅れて理解するというか。鑑賞スタイルとしては、愛の気持ちに自分自身を重ねることで「あぁ、わからなくはないかも・・・」と朧げに納得していく感じだった。
それは僕の中にも愛のような暴力性、支配性、執着性がある証なわけで、そんな愛が持つ愛性についても考えさせられました。
ところで「愛」ってなんだろうか?
「愛」とは、その人に執着し、何がなんでも一緒になりたいという思う気持ちなのか。それとも、その人を尊重し、その人の気持ちを優先し、離れたければ離れればいいという気持ちなのか・・・。
僕は割と恋愛において後者的な思考をしてしまうわけだが、一般的なラブストーリーにおける「愛」の描かれ方って前者が多いような気がする。
まぁ人それぞれに愛の形はあっていいと思うが、今作はいろんな愛の形が描かれるのが素敵だった。
『自分の好きな人の好きな人って、基本的に自分に持ってないものを持っている』
これは、今作を手がけた監督の言葉だが、とっても的を得ていると個人的には思う。
人って好きな人の両思い的な関係性を目の当たりにすると、己の不足を感じてしまう。そしてその胸に抱えた空虚な穴を埋めるべく好きな人を手に入れようとする。時には愛のように常軌を逸した行動でー。
愛の恐ろしさを知りましたね。
あと良かったのは、
山田杏奈の魅力が爆発していたところ。
「ミスミソウ」で彼女のファンになったけど、お顔が可愛いだけでなく、若手女優の中では数少ない演技派だと思う。役者と役の間に存在する「揺らぎ」がほとんどなくて、完全に愛になってました。
まぁでも実は今作の場合は、その「揺らぎ」があっても全然楽しめるんですけどね。
なぜなら、こんな可愛い女の子がこんなヤバい役をやるなんて、という外見と中身のギャップが興奮材料になるわけで、「演じている感」が多少見え隠れしても、それはそれで楽しめるんですよね。
これはヤバい女が出てくる映画の楽しみ方であり、強みかと。
洋画だと「クロエ」のアマンダセイフライド。
邦画だと「オーバーフェンス」の蒼井優。
ドラマだと「梨泰院クラス」のキムダミとかが、個人的に印象に残ってますね。
最後に。
一般的な青春映画ではないけど、思春期の荒れ狂う心がよく描かれた作品なので、高校生にもオススメですね。
高校生って人生を左右する大事な期間だと思う。
大人しかった子が荒れ狂ったり、逆にうるさかった奴が自分の殻に閉じこもったり、それは人それぞれだが、そこにどんな背景や葛藤が存在したりするのか。
今高校生の子は自分の生活と照らし合わせれるし、もう成人している人は懐かしむことができるでしょう。
僕は「あぁ、そういえば、こんな子いたな〜」と、しんみりと自分の高校時代を思い出しながら観てました。
もうすっかりオッサンですね。
<印象に残ったセリフ>
「やめてほしいならちゃんと嫌がってよ」
「私たとえ君のためなら両目を針で突けるけど、その代わり私が失明したらずっとそばにいてね
どう?
これで美雪より私を好きになる?
ならないでしょ?
だから思い悩む必要なんてないよ」