デヒ

偶然と想像のデヒのネタバレレビュー・内容・結末

偶然と想像(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

偶然の出会い。
1話ー時間を戻したらどうだろうか。
2話ー恐れずに言った方がいい。皮肉な状況、むしろ想像だったらいいのに。
3話ー錯覚による出会いだが、逢いたかった対象が目の前に立っているようだ。あなたをその人だと思って私の本心を言います。

東京フィルメックスの開幕作として鑑賞。
三本の短編をまとめたオムニバス映画

1話 『魔法』
1話でめいこが男に「グミちゃんが本当に好きなの? だから中途半端なんじゃない? あいまいにすると相手が傷つくだけだよ」と言うのだが、3話でも「何か幸せじゃないって言っちゃいけない気がする」という台詞があるように、これは人生を生きていく上にも当てはまり、見ている間ずっと映画の作り手にとって本当に当てはまる正義であり、言葉だと考えた。
タクシー内のシーンは『ドライ・マイ・カー』を思い出してくれた。車の中での撮影がすごかった。見るたびに驚く。
ズームは視線分散のため、物語の流れのために使ったといったが、私はホン・サンスの映画が思い浮かんだ。ズームもそうだし、映画の雰囲気もそうだし…。
(特に、1話での喫茶店のシーンが、ホン・サンスの映画と似ていた。ある場面が演出され、ズームで換気した後、まるで何事もなかったかのように再スタートする状況。)

2話 『扉は開けたままで』
第2話は教授の事務所でドアを開けておく習慣、オープンな空間で陰の性に関する小説を読むのが印象深かった。
たまたま教授のもとに訪ねた学生。初めは不健全な目的で接近しエロくて妙な雰囲気が流れていたが、どんどん自分の話を集中して聞き、共感してくれる教授の姿にどんどん自分の心を開いていく「言いたい、やりたいと思った時に行動した方がいい」対話で変わりつつある二人の姿。二人の関係が男女の異性間ではなく、師弟間としての人間としての接し方であることが感じられた。 羨ましい。こういう関係。
後に皮肉な状況が出てくるが、本当に面白かったが、想像であってほしかった場面だった。

3話 『もう一度』
第3話はエスカレーター、偶然の瞬間とそれによって生じた出会い。その出会いがお互いの錯覚による出会いだったとしても、また新しい縁を作り出す。お互いの思い出と痛みを相手に重ねて自分の本音を言う。いつか自分の感じていることを誰かに打ち明けたい時があるじゃないか。3話の主人公二人はお互い知らない仲だったが、自分の心を語り共有し、癒していく。お互いの名前を共有する場面、最後に会いたい対象の名前を思い浮かべた後、抱き合う場面がよ好きだ。エスカレーター、遠い道を走って出合う場面。

この映画で共通しているのは、表面だけではなく、心の奥底にある本音を相手に打ち明けることで共感を得、感情共有をし、癒される。
そして全ての話の台詞は非常に多く、ロング・テイクであるが、カット割りも少ないのに、観客を集中させる。台詞の力が素晴らしい。全然退屈しない。集中させながらもその中に話を把握できるように手伝う。人生におけても学ぶところが多い台詞。

私は1話、2話、3話いずれも好きだが、一つだけ挙げてみろと言えば3話になりそうだ。

最近濱口監督のことがもっと知りたくなった。興味深い。
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