いったつ

偶然と想像のいったつのネタバレレビュー・内容・結末

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

濱口竜介監督による中編3本立て。

特に響いたのは1本目の「魔法(よりもっと不確か)」。
冒頭、タクシー車内での恋愛トークは、運転席から盗み聞きしているような視点も相まって絶妙な緊張感を感じさせる。
別れた恋人を引きずる男を「重い」と一笑したのは動揺のカモフラージュであり、そうした細かい演出も上手い。
オフィスでの会話は憎愛とプライドが入り混じったカオス。徐々に漏れ出す本音と物理的に縮まる距離にリズムを感じて見入ってしまう。
最後に女が男に問うた二択は自分自身への二択でもあったが、男がそれに向き合って答えを出した以上、女にもはや選択肢は残されていなかった。
再開発に向けて更地になった渋谷桜丘町と、吹っ切れた女の表情をリンクさせた結び方が前向きで良い。

2本目は大学教授と女学生の棒読み演技に何故か引き込まれた。
1本目と違って、物語の余白の多さで想像が掻き立てられる。
ラスト、軽薄な男子学生との再会という偶然で、(元)女学生に何が起こるのか。何も起こらないのか。色々想像してしまう。

「俺たちは雰囲気で(会話をしている)」の局地である3本目の出会いは偶然というよりもはや過失。だが、「元気かと聞かれれば元気ではない」状態で救いとなるのは、そんな無理やりなアクシデントなのかもしれない。
コロナ禍のメタファーとも取れるSF設定も良いアクセント。
もう一度見て反芻したい。

ほぼ全ての都道府県で単館上映、かつ東京以外は上映回数も少なめなのが惜しい。
ル・シネマは鬼の2スクリーンフル稼働だが、週末は満員が続いている様子。
上映形態に関しては製作側の拘りがあるのかな?
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