れん

偶然と想像のれんのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
5.0
3篇が織りなす偶然と想像の世界は想像を遥かに超える凄味と素敵さに溢れていた。濱口竜介監督が創造する物語は異次元の面白さ、おかしさ、哀しさを纏い、劇場で見るに相応しい世界を突きつけ、確実に私たちの日常を豊かに照らしてくれる。画面の派手さで魅せるのではなくて緻密に練り上げられた脚本、それに呼応するように煌めく役者たちの動き、言葉を紡ぎ魅せる物語の奥行きに目が離せなくなる。言葉と言葉が通じ合う、言葉と言葉が響き合う瞬間を空気感、そして視覚的にさりげなく描くのが恐ろしい程に巧い。人と人の会話の始まり、そこから加速する会話のドライブ感の気持ちよさはもはや一級芸術。特に個人的に素晴らしかった「もう一度」は過去と過去が響き癒し合い、フィクションを飛び越え、現在そして未来へと生きていく私たちへの励ましを送る。まるで濱口竜介監督の映画という魔法にかかったように夢のような時間を堪能した。濱口竜介監督らしさが詰まった名刺代わり的な傑作。
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