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偶然と想像のharunomaのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
1.3
濱口竜介による孤高の反戦映画、厚顔テラス会話劇シリーズ。
大嫌いなホン・サンスの香りと共に。

「香も音も色もただそれを感じる人間の感覚器官がちがってゐるだけで」
抒情歌(1932)〈川端康成〉

イメフォと違い、Bunkamuraの壁の、スクリーンの光の反映は、マットにフラットな方面へ消えていく。やはり肌理(テクスチャ)か、アフォーダンス。上映中に見つめるべき壁は手作りに限る。
近年のこいつが撮る正面ショットは、半可臭いから止めたらいいだろう。正面ショットまでの手捌きが、定量的な計算によってカポの宙吊りを構築する。決めの不粋な科白とズームと共に。レヴィナス以前に、撮影する側の卑劣さの眼差ししか見えない。無価値のような顔、見つめ合うゾンビは妄想だけにしてくれ
圧倒的にジョエル・エドガートン(カーペンター)の顔が足りない。

歯痛のため集中できず。
原子バクダンで百万人一瞬にたゝきつぶしたって、
たった一人の歯の痛みがとまらなきゃ、なにが文明だい。バカヤロー
『不良少年とキリスト』坂口安吾

それは短いポーズの時間しか与えられない画家が、
パレットに絵の具を用意し、モデル(傍点筆者)がいなくてもできることはすべて、どうにか自分のメモをもとに、あらかじめ(傍点筆者)記憶で描いておくのと同じである。
『スワン家のほうへⅠ(コンブレー1)』マルセル・プルースト 吉川一義訳

あらかじめ-与えられたものの、偶然と喪失。
邂逅の準備が待たれるヒアアフターな、午後。
想像のタイキ、破裂する間際の。
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