南森まち

偶然と想像の南森まちのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
3.6
40分の中編×3篇からなるオムニバス。
すべて息もつかせぬ会話劇で、冒頭から台詞に集中させられるため、最後まで楽しく見られた。
そして出てくる人物が皆理屈っぽく長回しも多い。集中しっぱなしの2時間でした。疲れる…!

異様なくらい登場人物たちがハキハキとしゃべり、決して相手の会話をさえぎらない。そして説明的な台詞回し。
わざと感情をこめずに話す「イタリア式本読み」と呼ばれる独特の演技手法をとっているらしい。
普通の映画であれば、「過去のシーン」や「回想シーン」または「作中劇」として扱われる物語も、すべてセリフで語らせる。
違和感バリバリだけど、一見の価値はある。
ただ、一発限りのネタだと思うんだよなぁ…

3篇の話はつながっていないが、どれも恋愛がらみで、女性視点の愛情や憧憬を描いており、ドキドキする展開になっていて驚く。
脚本も書いている濱口監督はすごいですね。
ただ、どの話も性的にオープンなキャラばかりで、海外小説や村上春樹が好きは感じはビンビン伝わってくる。こんな性的嗜好に脳を支配された人たちに、私は出会ったことがない。みんなテストステロン出すぎなのでは…。

あとこの映画の高評価は、順番の妙だと思うんですよね。
1話目がハラハラする会話劇で面白いんです。そのため次はどんなのが来るんだ!?という期待感で引っ張られますが、2、3話目は予定調和なよくあるお話で、単体としてつまらない。

特に、2話目は内容もひどいし、いくらなんでも引き延ばしが過ぎる。これ20分で十分でしょう。映画館で金払って、エロ小説の朗読を何分聞かされてるんだ?と素に帰ってしまいました。

個人的には
1話目 4.0
2話目 2.9
3話目 3.4

それを差し引いても(1話目、3話目で)面白いものを見せてくれた感はありました。
『ドライブ・マイ・カー』はいくらなんでも長すぎるので、こちらの方がマシ…いや良作です。

上記のように、台詞が異様にハキハキ聞こえるため、目をつむっていても同じ体験ができる不思議な作品。
しかも内容の99%は会話なので、これならラジオドラマでいいような気もする。
良く言えば、視覚障がい者に優しい映画かな…