演出が面白い第一話
会話劇が面白い第二話
展開が面白い第三話
と、それぞれの映画表現に光るものがある濱口竜介監督の短編オムニバス作品。
〜第一話〜
パーティはそのままに
トントン拍子で撮影は進み、業務終了。その帰宅路から物語が始まる。タクシー車内の会話は運命と偶然が交錯するものだが、タクシー運転手という外部の視点から見ることで居心地の悪さがずっとある。オフィス、カフェなど徹底的に外部を入れる気まずさを感じさせる点が気に入っている。
結論に至る場面で暴力的なズームアップという魔法が芝居の世界から現実に切り込むハッとする演出で描かれるところが面白く、ズームアップ自体は三篇全部に登場するが、個人的にはこれが一番しっくりきた。
〜第二話〜
密室にしない欲望
第一話ですこし話題に出た「会話のリズムが合う」ってこういう間合いなのかと思った。誘惑する女VS誘惑に乗らない教授のサスペンスからの言葉論。でも基本的にはくだらなく、ドアを開けた状態で官能描写を音読するというフェチズム全開の演出が光っていた。
渋川清彦のパフォーマンスが虚実の境目をボヤかしていて、見応えたっぷりだった。
〜第三話〜
コント「仙台駅」
テキトーすぎるSF設定が気になる話。コンピューターウイルスの背景はあまり活きておらず、逆にノイズになっている。進行上邪魔となる現代文明を排除するパワープレイに「その土曜日、7時58分」を思い出したが、仙台駅前にパソコンマウスの看板があったり、電話やテレビはあったりとどの辺りまで影響を及ぼしているのか掴みづらく、このSF設定は雑にしか見えなかった。
しかし、ストーリー展開は3話中最もエンターテイメント的に面白く、第一話にも共通する形容し難い関係性だからこそ生まれるコミュニケーションに切り込んでいるのが素晴らしかった。
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ロメール作品のような文学からの引用や、映像表現、特にカメラの技法は参照点が明らかだったりするが、そんなに身構えなくても良い娯楽作になっていて安心した。