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対峙のAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
4.2

銃乱射事件の被害者家族と加害者家族が対峙しかわされる言葉の応酬から綴られる会話劇。ただ単なる会話劇に収まらない展開の変化や双方の関係・心理描写の変容がしっかり用意され、。

十字架、賛美歌、マリア像、壁に貼られた啓示の言葉。舞台が教会だから当然とはいえ、やはりキリスト教的モチーフの散りばめられ方に目が行く。
僕(無宗教ですが)がキリスト教の最も重要な教えの一つだと考えている「赦し」。
赦すという事の難しさと、それを超えた先の光を呈示するような、今世界が必要としている映画だと感じました。

◆◆以下ネタバレ有り◆◆

従来の国家対加害者間で罪を問う刑事司法に対して、被害者と加害者が向き合い、問題点を見つめ合う「修復司法」という考え方があり(アメリカ、オーストラリア、ノルウェーで実践されている)、本作はその手法を映画化したものだ。

高校で起きた銃乱射事件の被害者の母親ゲイル(マーサ・プリンプトン)、父親ジェイ(ジェイソン・アイザックス)、
加害者の母親リンダ(アン・ダウド)、父親リチャード(リード・バーニー)。
事件との向き合い方は四者それぞれに異なる。

リチャードの態度がどこか事務的だ。謝罪の言葉に心が篭ってないと感じる。ジェイは、許すと言いたい、だがリチャードの態度が納得できない。加害者の家族はもっと傷付いて欲しい、被害者の我々はこんなに苦しんでいるのに、と。

ではリチャードは息子の罪に苛まれる被害者家族を踏みにじる冷酷な人間なのか。四人で交わされる会話の中で、彼も加害者の親として社会から厳しい制裁を受け、押し潰されそうになった末の振る舞いなのだ。

本作は最愛の息子を殺された被害者家族が加害者を「赦す」事の困難さを描いている。
会う前は許すと言うと決めた筈なのに。加害者側の達観したような態度を目の当たりにすると…当事者として喪失や傷を抱え、割り切れない感情や押し殺せない憎悪の念が湧き上がる。

物語が現実世界に与える影響の大きさを、作りては信じている。だからこそ、

ラストに、ゲイルとリンダが抱擁するシーンが蛇足だと感じる向きもあるが、
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