柊

対峙の柊のレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
4.3
アメリカで起こった高校生銃乱射事件の加害者と被害者の双方の保護者の会談と言うか話し合いを完全4人の密室会話劇による作品。

誰でも想像するのは,コロンバイン高校銃乱射事件。
アメリカのセラピーは随分荒療治な事を提案すなぁ。とか思いつつ上記の事件が頭によぎるので、とても脚本ありきとはだんだん思えなくなってきてしまう。それくらいドキュメンタリーなんじゃないかと思うくらいにある意味自然だった。途中詰問はしないと言っていたけれど、どうしてもそう簡単に理性だけで抑え切れるものではなく、感情的になってしまうけど,それすらとても芝居には見えなかった。
それくらいリアルでこの場面果たして、私がみても良いものか?という感覚に襲われる。

被害者の母親が、加害者の少年の事件への兆候を問いただすが、そう言った一連の双方の話を聞いていると自分の価値観もものすごいグラグラする。親であれば誰もが可愛い我が子。そしてその子を殺人者に仕立てようと育てる親はあるまい。それでも青少年が犯罪に走る動機は…それはもう誰にも分析などできないものだと思う。それを食い止めることができなかったという罪で保護者が罪を償わなければならぬのなら、一連の事件後の加害者家族の状況を見れば十分かとも思う。
ましてや特定の理由も無く、被害者となり命を落とす運命を背負ってしまった子の親にとっては、どんな理由をつけられても納得することは無いだろう。

そんな相容れない立場の人達が話し合っていったいどんな解決があるのか?途中ももうこの会話の果ての決着点はないのでは?とも思ったが、なんて見事な結末を見せてくれてのか。凄いなぁ。

この世の理不尽な社会の中で生きるとは、何と難しく、そして赦すという行為がどれだけ自分を救うことなのかを思い知らされた。

最後に加害者の母リンダが戻ってきて告白するシーンに痺れた。決してすんなりと終わった訳では無い複雑な人の心がここでも示された。

そして最後に、何度も見る機会を逸しながら,やっぱり劇場に足を運んだのは、マーサ・プリンプトンが出ていたから。若い頃の単なる可愛子ちゃんでは無くて,なかなか癖のある容貌プラス特徴的な声。おまけに当時リバーの恋人だった。若い2人がレッドカーペットに揃って現れた映像に今でも甘酸っぱい気持ちが湧いてくる。
その後別れてしまうけど間もなく知るリバーの訃報。全くの他人事ながらマーサの心を慮ってしまう自分も若かった。
第一線ではとんと観なくなっていたのに、ここにきてのマーサ。面影を残しつつ年齢を重ねたマーサはやっぱり良かった。生きていれば同い年のリバーの今を想像してしまうのもあの時の2人を見た我々世代のあるあるなんではないかな。
柊