Toshiko

対峙のToshikoのレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
4.0
お金かかってなさそうだし、場面も一場面しかなく回想シーンすら入っていない。まさに省エネ映画なのだが、おそらくはコロナ禍に作成されたのでは?出演者も少人数で、撮影セットもひとつ。人の出入りも管理できる範囲だったのでは?とやや穿った見方をしてしまった。
しかし惹き込まれる作品だった。銃と自作の爆弾を持ち、学校へ行って一学年下の教室で殺人事件を起こした子どもの親とその被害者の親が数年ぶりに教会を使わせてもらい、話し合いの場を持つ。まるで演劇の舞台を観ているよう。会話劇に息が詰まりそうになる。
(以下少々ネタバレ)










4人が手を繋いでこの集まりを終わらせようとしたところまで、会話の流れとして不自然なことはなく、しかしこれで終わるのは何か作りものっぽいというか、無理矢理だった。そんなことで子を亡くした二組の親たちの気持ちが収まるわけはない。まして加害者と被害者だ。
そういう違和感を持っていたら、加害者の子の母親が一旦帰って途中で戻ってきて、子どもとの最後のエピソードを話し、そのことで自分を責めていたのだという話をする。ああ、これをどうしても話したかったんだと思う。ずっと自分を責め続けていた。誰にも吐き出すことができなかった。そういう年月を過ごしてきたのかと思ったらたまらなかった。
途中から気づかないうちに泣いていた。はじめはコンタクトレンズ外さなきゃと思い、そのうちに気持ちが揺さぶられ続けていることをやっと自覚した。
Toshiko

Toshiko