「事件」は目には見えない。「その後」から突然映画は始まる。何が起こって、どういう状況なのか。
足元のおぼつかない、崩れてしまいそうな砂の上。その上で静かに息を殺してバランスをとろうと試みている感覚。ふとした拍子で、瓦解してしまいそうな。
しかし、ありありと浮かんでくる。見せないではっきり描く。二組の夫婦の対比を中心に、各夫婦の関係も実に繊細。四人の人物設定が巧み。
閉じられた部屋のみでつくることもできたと思うが、そうはしなかった。場所と機会を提供しようと動く人たちも関わらせながら、過去を遡り、未来に想いを馳せ、こちらに問いかけてくる。どう関わるのか。何が正しいのか。そして、あなただったら、どうするか、と。