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秘密の森の、その向こうのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)
4.4
セリーヌシアマ天才すぎる

映像の特徴を完全に支配してる。
この73分に過不足なく要素が配置されていて、時間の芸術である映画の一種の完成型な気がする。

ネリーの家と森とマリオンの家が基本で、
いかようにでもできると思う。
90分にもできるし、60分にも。
でも、この情報量でストーリーの面白さとテーマのバランスを最大化するとこの時間になるんだろう。

タイトルからわかるかもしれないが、
謎解き要素を先頭に置き、途中からは別れに向かって進んでいく。
向かう先と行き先が分かっているから、そのゴールにどう言う道を進んでいくのかが気になる。
物語はアクションで進んでいき、会話でテーマが香る。

子供の会話なんだから言葉足らずは当たり前で、食い違っているところもあるけど、
その食い違いもテーマとして昇華させる。
その子供に向ける親の言葉にもキャラクターが出ていて、過去が見える。

それを後押しする要素がたくさん。
プロップや美術、アクションに意味が込められている。こういうのって、無意識の美的において雰囲気を出すために使われることも多いんだが、
今回はちゃんと目線に入るようにおいてある。複数回置くことで違和感を作り出し、そこに意識を向ける。
壁紙もたばこもシリアルもセーターも。
そこに無理がないのはセンスでしかない。
自然なアクションに対してストーリーテリング要素とテーマを引っ掛けるうまさ。
そしてその時間の使い方がうますぎる。


編集は無駄な時間がないのに、忙しい感じがしない。ゆったり間をとる場所もあるのに、たるくない。
緩急がシーンごととシーケンスごとにあって、前傾で物語が進んでいく。
見せない編集ってよりも見せる編集で、シンプルではあるんだが、むずいぞこれ。
シンプルであればあるほど、顕著に差が出る。

複雑に映画的言語を多用していないからこそ生まれる真っ直ぐさ。
次の作品が楽しみすぎる
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