これが最優秀賞になるベルリンの懐の広さよ。あらすじだけみれば俗っぽいだけの話になりそうなところを、さまざまなトリッキーな演出により、現実を多分に反映したブラックコメディとしてかなり楽しめた。
全3章のうち、1章はコロナ禍の空気を描いた映画として貴重な資料でもある。1、2章はわりと眠気を誘われたりもしたのだが、きちんと3章への前振りとして役割を果たしているのでもっとちゃんと見ればよかった。
本題の3章の議論、ひたすら横滑りしていく感じとか悪意の含み方、めちゃめちゃ最近Twitterで日常的に見るやつ……！という感じなのが面白かった。思想や政治の匂わせ方とかきわめて現代的でいや〜〜な笑いが込み上げた。
今回の自己検閲版、監督本人による"検閲"でひと工夫あるとはいえ、3章の議論の本題たるビデオがきちんと見られないのはやはりやや不満ではあった。完全版も配信で良いので見られるタイミングが欲しい。
