わんぱく長助

明け方の若者たちのわんぱく長助のネタバレレビュー・内容・結末

明け方の若者たち(2021年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

若者たちという括りにインクルードされた主人公が、普遍的な物語の中を彷徨するだけ。故に盛り上がりや熱狂とは程遠いのだが、その平坦な筋書きを漫然と眺めるというのが、本作の最も正しい消費方法ではないかと、私は解釈した。

物語終盤では、彼女との最終決戦を終えた主人公が街に戻るのだが、その際の画面の揺れ、彼の目つき等から、もしかすると衣囊に忍び込ませたダガーナイフでも取り出して、道行く酔っ払いたちを襲うのではないかという危なかっかしさを感じた。これもまた素晴らしい。

「不謹慎だけど興奮した。どれだけ自分が退屈な毎日を生きているか思い知らされた」

こちらは、同僚の指が業務上の事故によって切断された刹那、主人公が言い放った言葉だ。かの台詞に私は強く共感した。会社を無断欠勤した時。救急車のサイレンが近づいてくる時。大型台風が直撃するというニュースを見た時。小さな非日常に興奮を覚える人間は、いずれは取り返しがつかないほど大きな非日常に対しても興奮を覚える。きっとそういう風に出来ている。世界も、人間も。

それから、少々蛇足となるが、この私が原作者なら「明け方の馬鹿者たち」というタイトルにしていたと思う。そうしない我慢強さというか、余計に外さない分析力というか、原作者のそんな感性がすごく素敵だ。