Kamesuke

ボーはおそれているのKamesukeのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.1
アリ・アスター最新作。
現状日本での公開の目途が全く立ってないので米iTunesの配信で観た。

A24史上最大の予算を使って6分の短編『Beau』を3時間の大長編に膨らませた非ホラー作品で以て、アリ・アスターが自身のファンをふるいにかけにきたシュールな不条理鬱屈コメディ。
なんじゃこれは。

とことんふるいにかけた結果、本国では興収面で大コケして終わったのも納得。

幼少から母親の抑圧を受け続け、極度の不安症とトラウマを抱える中年童貞になってしまったボー。
そんなボーが父親の命日のために母親のもとへ向かう準備をしていた際、ドアに差していた鍵を盗まれて実家に帰れなくなってしまい…という序盤のくだりは完全に短編『Beau』まんま。

自宅を荒らされトラックに轢かれて軟禁されて…と、とにかく3時間ずっとホアキン・フェニックスが目の前の状況に怯えてるだけという、もはやホアキンが小動物のように可愛く見えてくるヘンテコな冒険が繰り広げられる。
まさに「毒母をたずねて三千里」。

現実世界を舞台にしていながら全くリアリティのない悪夢のような世界は、混乱し続けているボーが見ている世界だからなのか。
シュルレアリスム的な感覚映像表現は最近じゃチャーリー・カウフマンの『もう終わりにしよう。』に一番近いものを感じた。

いやしかしアリ・アスターの映画で屋根裏が出てくるとロクなことが起きない。

画面の画作りは短編『C'est la vie』や『Basically』を想起させる明るい色調だったり、全体的にも短編時代のテイストに回帰したようなトーン。

「家族」「遺伝」「歪な親子関係」と、相変わらずテーマは一貫されてる。

観終えた今は『ヘレディタリー』や『ミッドサマー』はこの壮大な嫌がらせを仕掛ける為の前フリだったとしか思えない、そんな映画でした。

3時間も一体何を見せられてたんだと思わずにはいられんが、個人的には嫌いになれん怪作。
次は西部劇映画ということでこれもめちゃくちゃ楽しみです。

ちなみにホアキンのチンポは無修正でした。
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