このレビューはネタバレを含みます
《総括》
僕にとってアリ・アスターはいつまで経っても肌に合わない監督。
だけど今回で多少和解に近づいた感触がしている。(ミリ単位かも知れないが)
コメディ部分では笑わせる部分が多かった。はじめ、僕も笑っていたけれどボーの切実さを観て段々と笑う気になれなくなってきた。彼はいつも真剣だった。
《ラストシーンについて》
僕も自らの過去の行いに耐えられなくなる時がある、例え相手に非があったと気づいたとしても。
自分の記憶で自分を断罪する寂しいエンディング。
これは人間の加虐的な部分を浮き彫りにする映画だと思う。そういった意味でラストシーンは彼の妄想でなく、現実のものであって欲しいと感じた。(その方が面白いと思う事が出来るから、という邪な理由を以って)
また、「観客と舞台の境界を曖昧にしたい」という劇中のセリフ。
私たちはあのラストシーンでのホールの観客であり、ボーでもある事の示唆。
映画に足を運んだ観客としての自分/完全なボーの視点で映画を体験した自分の境界が曖昧になる。
どちらにせよ、ラストの母殺しの妄想/現実に対するボーの解答が自死であることは明白である、と僕は思う。