あり

ボーはおそれているのありのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
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前評判から、ハネケのような暴力や、パゾリーニのような不条理を期待していたが、そういう点ではどちらにも似つかわしくない平凡な作品だった。『ミッドサマー』のときもそうだったが、アリ・アスターの作品は暴力性に着目するものではないのかもしれない。
ハネケやパゾリーニの作品では、人間の主体性を徹底的に破壊して客体化(モノ化)し、人間の生々しい生を剥き出しにすることが目的で、そのために暴力を利用している感じがする。一方でアリ・アスターの作品では、何らかのトラウマの表現として暴力が存在し、個人の主体性に焦点が当てられている気がする。映画の内容はそのトラウマと向き合うためのもので、セラピー的なものなのかもしれない。アリ・アスターがどんな人かは知らないが、凄く神経質な人なんだろうか。ボーを不憫に思ったのと同様に、アリ・アスターの苦しみに思いを馳せるのが正しい楽しみ方なのかもしれない。
あり

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