支離滅裂の3時間をあなたに。
初デートに、親子で週末に、学校で教材として最もふさわしくない類いの作品だろう。
漫然と観ていると、まさに3時間悪夢を見ているような気分になるが、考えて観たとしても正直よくわからない。
アリ・アスターのこれまで発表されている某かや、発言などを頭に置かないと理解は出来なそうだ。
メタファーと回顧と妄想が入り乱れ、そもそもボーが強迫症とかパラノイアを患っているらしいのでどこまでが現実か、現実は一片も無いのか、さっぱりわからんのだ。
大筋は母親の葬儀で帰省したいのにトラブルで帰れない中年の話。
そして作品は4部構成となっている。
ボーの住む(これも現実かあやしい)ひどく荒んだストリート、郊外のファミリー宅、逃げ込んだ森の中で公演される劇団、全ての悪夢の元凶と思われる母親の邸宅。
どの舞台に於いてもボーは悲惨な目に遇う。ホアキン・フェニックスの巧みな演技でなければ観てらんないだろう。そこはかとないおかしみが感じられ、次は良いことがあるかもと期待させられる(結果的にずっと悪いことが続くのだが😓)
最初から最後まで母親の支配がキーである。"最初から"目を離さないで。
そこから逃れられなかった男の抵抗物語なのかどうかもわからない。逃れようとしているように思えない。
これまでのアリ・アスター作品と比べるとグロ少なめ、ホラー少なめ。でも恐ろしく抑圧的な映画。
ちなみに唯一少しだけ明るい話が展開されるアニメパートは私の敬愛するヤン先生の系譜と思われる「オオカミの家」の作家さんが参加しているらしい。なるほど。相性良いよね、世界観が。
観るときはじっくりと心に余裕をもって、お菓子とコーヒーを準備してさ。斜に構えて観てください。
