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ホテルアイリスのakubiのレビュー・感想・評価

ホテルアイリス(2021年製作の映画)
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ドラマチックがすぎる嵐の夜。いつまでも灰色の蓋をされたような空。永遠に解かれることのなかった言葉は海へ還っていった。あわせ鏡のなかのわたしとあなた。すいこまれてとけて夢幻に連なるわたしとあなたとあなたとわたし。愛と憎しみの円環はそっと閉じられ、ふたたびまわりはじめる。

静謐な痛々しさにどろっとしたひとのどうしようのない欲望が妖艶に美しい原作に、生と死の渡し舟の番人の李康生が幻想を連れきたから、とてもすきだった。映画を観ていたのに頁にすいこまれていたようなここち。
小川洋子さんの紡ぐ言葉がすきだし、映画は映画で別の次元で(あたりまえだけれど)美しく蠱惑的で、ラストシーンのサスペンスフルな明るさがたのしかった。
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