湊健一郎

彼女が好きなものはの湊健一郎のレビュー・感想・評価

彼女が好きなものは(2021年製作の映画)
4.5
【年間ベスト確定】


個人的には『エヴァ』を除いては今年映画作品の暫定1位確定しました。こんな作品にふいに出会えるから映画は面白い。

前知識なく原作、ドラマの存在も知らずに鑑賞。

観る前は腐女子がゲイを好きになるイケメンがでる青春キラキラコメディかと思ってましたがLGBTQの問題を正面からむきあった決してライトではなく重いテーマの社会派作品に面食らいました。

そして中盤からとにかく涙が止まらなかった。
今年一番泣いた作品でした。涙、、、

皆と「同じ」が求められる学校という世界が舞台。
その「同じ」を持てず「ゲイ」として生まれ、必死に皆と「同じ」幸せを求めて生きようとする主人公の苦しさが凄くリアルに丁寧に描かれています。

「ゲイなんて自分の身近にいない」と信じた世界を、大半の人が生きてることを表現してるように思いました。そこに原作者のこだわりを感じました。こうしないと残酷さはきっと表現できなかったと思います。
その残酷な世界でどれだけの人が傷ついているのかと考えさせられた。

印象に残ったのはHRのシーン。
リアルな生徒が話し合うシーン。
グサグサ刺される思い。


映画での神尾楓珠さんが期待以上に素晴らしかったです。ただのイケメンではない!
偽る時のぎこちなさ、自然でいられる時の笑顔、本当に繊細な演技でした。

また何と行っても山田杏奈!!
難しい役柄だとおもうんですが素晴らしい演技力。前作の『ひらいて』も素晴らしかった。
今年の彼女の躍進は凄いものがある。

彼女の「理解できないかもしれないけど、想像してみたい」と言う言葉に胸をうたれました。

大事なのは相手に正面から向き合って寄り添おうと想像する力かもしれません。

【複雑なものを簡単にしてわかったふりしたくない】

「なかったこと」にしてきた無数の摩擦は確実に確実に当事者を傷つける。

社会全体が摩擦をゼロにすることなくしっかりと向き合えたとき、その先にどんな希望があるのか。

2時間で様々なことを、その人の立場で考えられるようなきっかけになっている良作でした。

そして、エンドロールが終わるまでが作品です。
オススメ。
湊健一郎

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