金魚鉢

彼女が好きなものはの金魚鉢のレビュー・感想・評価

彼女が好きなものは(2021年製作の映画)
3.9
LGBT問題との距離を描いた繊細な作品。程度は違えど共に誰にも言えない秘密を抱え、マイノリティに苦しむ“ゲイ”と“BL好き腐女子”という関係性が同性愛との距離というテーマに対して抜群の置き方。世間的に扱われるようになり理解しているつもりでいたLGBT問題は実際のところまだまだ身近に捉えられていないんだなと気付かされた。身の回りで全く同じことが起きたら、今まで通りに接することは難しいと思ったし、きっとそんなあからさまな気遣いや違和感が当人にとっては居心地が悪いのだと思う。“自分が傷つくか相手を傷つけるか”誰にも相談できない孤独感を抱えて生きていることや思い描く幸せのゴールは皆んなと同じなのにそこへ向かえないことなど深刻な悩みがより具体的に伝わってきた。この映画を観て純が仲間に恵まれていたと感じた部分こそ、これから自分たちが見習わなければいけないところだと思った。LGBTに限らず亮平のような接し方をしてくれる友達がいることで救われることがあるし、三浦の演説も胸を打つものがあった。『彼女が好きなものは』という単純ながらメッセージ性を表すのにこの上ないタイトルも秀逸。
気になったのはキャスティングにより美化されていたところ。俳優陣の演技は良かったけど、キラキラっぽさで入口を狭めてしまっているのとリアリティが損なわれているのが勿体ない気がする。あと全校集会の演説までがテーマに反して急にドラマチックなところで気持ちが離れかけてしまった。
金魚鉢

金魚鉢