ぷにぷにパンチ

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のぷにぷにパンチのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

初めてFilmarksに投稿します!これからたくさん映画の感想を書いていきたいです。

★全体の感想
これまで私の知っていたゲゲゲの鬼太郎のアニメとは全く別物の作品で衝撃を受けた。
つい目を背けたくなるシーンや、想像しただけで吐きたくなるストーリー展開が辛かった。一方で、友情、愛、社会構造への問題提起など重要な要素もふんだんに盛り込まれていて、とても面白かった。
人間関係を丁寧に描写した要素と、サスペンス、ホラー、グロ要素が同一作品内で描かれていて、鑑賞後に気持ちが追いつかず、しばらくぼーっとしてしまった!

★「搾取する側/される側」の対比構造
映画全体では、社会に内在する搾取する側と搾取される側の構造について描かれていた。
世界大戦が終わっても尚、経営者はMを労働者に飲ませて身を削らせて働かせ、利益を得る。そのM自体も、村落の家系が幽霊族や誘拐した人間を搾取し、膨大な利益を得ている。経済が発展するにつれて市場における競争は激化している。経済発展は必ずしも良い面だけではなく、搾取の構造を深刻化させるリスクがあると改めて感じさせる映画だった。

★平和への糸口
ゲゲ郎と水木の関係性に平和への糸口を見出した。ゲゲ郎は、人間に幽霊族の仲間たちを殺された。人間である水木は、ゲゲ郎からしたら、「敵」に当たるようにも思われる。しかし、水木もまた戦争で仲間を失っており、ゲゲ郎と水木は痛みを分かち合い、相棒のような関係になっていった。
世界ではいまも搾取する側が争いを開始する決断をし、搾取される側が最前線で命を落としている。憎しみの連鎖が続く限り争いは無くすのは難しい。しかし、痛みを分かち合うことで、「敵」に分類される場合であっても分かち合えるかもしれないと感じた。

★表現で興味深かった点
シンドラーのリストにおける赤いワンピースを着た少女と類似した表現が用いられており、本作での少女の死が丁寧に描かれていた。
水木が村へ向かう電車の中で、日本人形を抱きながら咳をする少女が目立っていた。映画後半でMを製造する工場には、多くの誘拐されたゾンビのようになった人間たちが繋がれてMを精製していた。暗い画面の中で、ゴミの山の中に真っ赤な日本人形があり、ゾンビのような人間のうち小さな人間が咳をしていた。一瞬のシーンだが、猛烈に少女の死を感じさせる描写だった。