叡福寺清子

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎の叡福寺清子のレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.3
吉野弘幸とは私にとって一つのブランドであります.こんばんわ.三遊亭の中の人です.最近連チャンで登場していますが,ただの偶然です.お気になされないようにお願いいたします.私と吉野弘幸氏の出会い・・・というか吉野弘幸脚本作品との出会いは19年前にまで遡ります.当時,私は仕事面で人生で一番苦悩していた時期.そんな時に知り合ったのが吉野弘幸脚本の舞-HiMEでした.以来,文字通り身を削る想いで作品を愛し続けたわけでございます.当初視聴ラインナップに入っていなかった本作でしたが,数日前に氏が脚本と知り,そんなわけで慌ててチケットを予約した次第であります.

結果,やはり吉野脚本は良きものと,再認識できたのが本作最大の収穫でございました.

時代は昭和31年.「もはや戦後ではない」と政府が宣言した年.ですが,車が途中までしか辿り着かないような奥地の山村では,古くからの因習が今なお残っていた時代.哭倉村もまたそんな村の一つ.その村から日本を牛耳るほどの絶大な権力を誇る龍賀一族御当主逝去のニュースがもたらされます.龍賀製薬との取引銀行の担当行員である水木は哭倉村に赴きますが・・・

犬神家を53倍ほど濃縮した人間模様.人はどこまで醜悪になれるのかに挑んだような人の有り様は私の大好物.えぇそうですよ.龍賀の人々をずっとニマニマしながら視聴しておりましたとも.吉野氏は齢重ねても丸くなってねぇなぁと,安堵すら憶えた次第です.良心すら失った龍賀の人々こそ,妖怪,いやそれでは妖怪に失礼とか言う指摘はありきたり過ぎて口にはいたしませんが(言うてるやん),とにかく醜い.あれはね,悪意がないから余計に醜いんですよ.龍賀の人々にとっては当然の行動.いやぁ,恐ろしいものを観させていただきました.
でもね,泣いちゃったんですよねぇ,私.負けです負け.私の完敗でありますとも.やっぱ吉野脚本はいいものだなぁぁぁぁ.