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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のコマミーのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.8
【鬼太郎誕生までの道筋】



1965年から週刊少年マガジン・少年サンデー他にて連載され、今でもTVアニメを通じて支持を集め続けてる"水木しげる"さん作の「ゲゲゲの鬼太郎」だが、その"前日譚"が存在する事はご存知の方が多いだろう。

それが1960年から64年にかけて連載された「墓場鬼太郎」だ。水木しげるさんが自分と照らし合わせて誕生した"血液銀行員"である主人公:"水木"と"鬼太郎"たちとの交流の物語に加え、鬼太郎の"父母"を中心とした"鬼太郎の誕生秘話"を描いた前日譚でもあり、原点である作品だ。2008年にアニメ化されたが、その"壮絶さ"は原作の漫画の方が上である。

本作はそんな「墓場鬼太郎」と2018年から2020年まで放送されていた"アニメ第6期"のベースを組み合わせた、少し"解釈を変えた"劇場アニメとなっていた。
要するに、本作は「墓場鬼太郎」に近けれど、現代風に物語をアレンジした"別物"である。

まず水木と鬼太郎の父が出会い交流する時点で違うのだが、物語は水木が自身が勤める血液銀行で贔屓にしている、"村を牛耳る巨大な一族"の中で起きた"数々の殺人事件"の謎を、同じくとある理由で村にやってきた鬼太郎の父と共に解明していくという物語だ。
原作とかなり異なり、一気にオカルトなファンタジー・サスペンスと化した本作だが、それでも見るものを魅了するシーンが沢山あった。同時に、この一族の中にこびりつく"家父長制"や水木が経験した"戦争の恐怖とそれによる癒えない心の傷"、そして高度経済成長期から根付く金持ちによる"貧困層への搾取"なんかが描かれ、実にこの現代に寄せた作品となり、原作同様、生ぬるくない描写が描かれていた。

鬼太郎の父は凄い強かった。強敵にもほぼ1人で立ち向かい、水木ともいいコンビネーションで描かれてた。嫌な奴の印象が深い"ねずみ男"が普通に水木や鬼太郎パパを助けていた所は、本当に良かった。若い頃のねずみ男、ちょっと小さくない?
そして家父長制の家族の1番の被害者は、1番若い世代…つまり子供だという事を再確認させられた。日本からも世界全体からも根絶されるべき家族の形だ。

本作を観た後、ちょっと第6期が観たくなった自分がいました。
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