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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のonisamのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

真っ当な戦争批判映画。情に訴えかけつつも、戦争責任を放棄しない。下手に被害者意識を持たせない。えらい。
因習村ホラーってしばしば植民地主義的(あるいは都市中心主義的)な目線を含みがちと思っていて、未開の田舎で非科学的な風習があるへのおぞましさでしかないと思う。ゲ謎はこれを徹底的に避けていて、なぜ因習があるのかというと、それは都市部の人間を無限に働かせる薬を製造するためで、因習の悪の根源が一地方にとどまらず、国自体に批判が向けられる構造が見事だと思う。沙代が「田舎を出て東京に行っても自由になることはできない」と言っていたのは、因習村だろうがなんだろうが、弱いものを搾取し、国や産業の甘い蜜を吸うのはごくごく一部の特権的な男性である、という現実に変わりはないことの言い換えではないか、とすら思う。
しかし、女性の描き方、特に三姉妹の描き方はミソジニーを感じてしまって、沙代もなぜ死ななければいけないのかと思った。おそらく、戦後映画の文脈を真っ当に引き継いでいるからこそ女性の扱いも戦後のままで、作品としての必然性はわかるがあまり乗り切れないなという感じ。
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