ニンゲンこわい。
夏の田舎もこわい。
自身の立身出世のために田舎の村にきた水木だったが、そこに住む人々のいきすぎた私利私欲(身内を蹴落としたり他人の命を奪ってまで達成しようとする)を目の当たりにして、改心したように思える。
利己的な欲を満たそうとする人間は、みんな左目を貫かれて殺される。殺したのはゲゲ郎ではないのだが、「この世は片目で見るくらいがちょうどいい」とのゲゲ郎のセリフとリンクしてるのか、実に示唆的だった。
(ラストで人々の怨念を受けて左目だけの姿になったゲゲ郎は、その人たちの代わりに世の中を片目で見ているのかなとも思った)
ゲゲ郎のアクションシーンで絵柄が妖怪チックに躍動する感じに変わってかっこよかった。
水木をすきになった娘さんが不憫すぎる。
水木がゲゲ郎を助けにいかなければ、娘さんが助けにいく水木にお供しなければ、村に変な因習がなければ、身内に良心が少しでもある味方がいれば、etc、憧れの東京にいくことなく狭い田舎で亡くなることもなかったのに。
5歳くらいの男の子に向かって、水木が「これからの日本はどんどんよくなる。病が治され、みんな豊かになり、問題なに一つなくなるんだ」的なことを言っていて、男の子にとっては未来のユートピアにワクワクするセリフで、鑑賞者にとっては現実のディストピアに対する最高な皮肉だった。
自分が殺されそうになったときさえもひょうひょうとしていたゲゲ郎が、妻のためには形相変えて熱くなっていて、めっちゃ人間でよかった。この作品内で人間への不信感を募らせるばかりだったから、大切な人への優しさをもつゲゲ郎の温かみある人間性に安心した。(幽霊族だけど)
ゲゲ郎の奥さんはなんで人間がすきだったんだろうか。人の生活に溶けこむ中で周りにいる人たちに恵まれたのかな。
