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フラワーズ・オブ・シャンハイ 4K デジタルリマスター版のMypageのレビュー・感想・評価

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150年前の上海の高級遊郭?
侯孝賢はそこに何を見出そうとしたのか?
5年来の馴染みで「水飴のようにべったり」だと揶揄されていた王と小紅の駆け引きのようなものが縦軸にあって、翆鳳が独立しようとするエピソードと双玉が若い客の正妻になろうとするエピソードがそれぞれサブストーリーのようにある。
王は初めほかの遊女に通っていることを小紅に詰問されるが、自分からはなかなか口を開かない。そのうち、小紅がなぜか結婚を承諾してくれないという不安をモノローグで語るのだが、実際にどんなやり取りがあったのかはわからない。そんなことを言いつつも、平気でほかの遊女のもとへ通って楽しそうに話す。あるとき小紅のところへ行ってほかの男がいるところに出くわしてブチ切れ、ほかの遊女と婚約してしまう。小紅はどことも知らない置屋でパイプをふかす。

関係性としては『世界の涯てに』も思い出すし、言ってみれば『スパイダーマン2』でキルスティン・ダンストがとる行動だって似たようなもの。その行動はいわゆる「浮気」なんだけれど、ちょっと相手を試してやろう、とか、仕返しをしてやろう、とか、どっちも好きで選べない!とか、そういう明確な動機が語られないままぬるりと実行されるので、着地点も曖昧で、誰かの視点から見れば悲劇にもなるのかもしれないが、そういう描き方をしていない。あるいはこれがすれ違いのもどかしさではないからなんとなく気持ち悪さが残るのかもしれない。

本題を避け続けて表面上の付き合いを重ねていく世界で、観客にもなにが本題なのかをわからせようとしない。そこでの出来事を切り取るだけ。現実はそう簡単には暴かれない。
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