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そして僕は途方に暮れるのAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

そして僕は途方に暮れる(2022年製作の映画)
4.0

フリーターをしながら彼女である里見(前田敦子)のアパートに居候、自堕落な生活をおくる菅原(藤ヶ谷太輔)、あることをきっかけに責められ里見のアパートを飛び出す。それをきっかけに菅原は親友や先輩の家に転がり込んでは揉め事を起こし、逃げるように家を飛び出す…果たして菅原の行きつく先は…。


クズ男映画の系譜に並べられる作品。面倒な事を全て後回しにしてヤバくなるとその対処が面倒になり、耐えきれず逃げただす主人公菅原。 
作中、後輩が菅原の事を「すげぇーかっこいい。」「映画になりそう」と褒めそやしていたが、自分には格好良くも、映画的だとも思えない。
自意識が肥大しているが故に何も行動を起こす事が出来ないくせに一丁前にプライドを持ち合わせている何処にでも居る凡庸なクズの若者。
しかし誰にも心当たりがあるのではなかろうか??
個人的には昔の自分を見ているようで(笑)、居た堪れなくなった(笑)

カメラに背を向けた菅原が振り替えって画面の方を見る怯えた目が何度も繰り返し写し出され印象深い。何をそんなに怯える事があるのか、と思う。

逃避行の先に行き着いた生まれ故郷の北海道で離別した父親と偶然に10年ぶりの再会を果たす。
この父親にしてこの子あり、と言いたくなる、その日暮らしの自堕落な男を豊川悦司が好演しているのだが、この父親との出会いが物語の転機になる。

ネタバレになるので詳細は書き記さないが、父子のダメ男二人を交えた、大晦日の晩食。しょぼい男達の人生の一コマがこんなに複雑で豊かな感情を湧き起こしてくれるとは。
泣きながら、目から涙が溢れるような名場面。

世界中の人々の悩みを一人で背負い込んで、巨悪と戦うようなスーパーヒーローを描くのも映画なら、
何処にでも居るような中二病的なショボクズ男の、取るに足らない人生の一コマにスポットライトを当てて名シーンにしてしまうのも映画!!

そういえば本作の主人公、菅原は映画研究会卒で、
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