走る屍

ノーカントリーの走る屍のネタバレレビュー・内容・結末

ノーカントリー(2007年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ゴッドレスとハードボイルドの果て。アメリカの無法地帯の乾いた面を重厚に表せてる。ここで描かれてるのは、血腥いよりもっと心にズシンとくる暴力だ。人間味を一切感じさせない、無機質で完全な“悪“を演じきったハビエル・バルデムのインパクトの強さ。そんな災害級な純粋悪であるシガーも、事故に遭えば普通に怪我をする。機械や悪魔ではなく、紛れもなく人間であるという事実が、シガーの冷酷非道さと不条理さを際立たせてる。現代の病みきった部分を象徴しているように感じた。

原題の“No Country for Old Men“からして、これは過去に執着する老保安官の物語なのだろう。小説の邦題と照らし合わせると、とても渋い。信念すら揺らがす、血と暴力に染まった国に呑み込まれそうになっても、暗黒の中には正義の炎があるのを信じ
たい。例えそれが雪道の焚き火でも。
走る屍

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