似太郎

ノーカントリーの似太郎のレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
4.3
🌵コーエン兄弟作品にしては陰鬱なトーンでいつものユーモアが消え失せた印象も受けるが十分観てて面白い逃亡劇+サスペンス映画の秀作。因みに原作小説は未読。

🌵主演したトミー・リー・ジョーンズによるラストの台詞の解釈が、公開時に色々と波紋を呼んだのをいまも記憶している。「だから?」とか「それで?」とか「何が言いたいの?」とか「意味不明」など結構、辛辣に批判するレビュアーも多く、もしかして思考力が低下してるのかなー?とも思ったりした。

🌵コーエン兄弟はひねくれたインテリなので、観客に説明を押し付けるやり方はしない。観終わった後、何かしら「得体の知れない凄み」を覚えるのはその所為なのだ。デビュー作『ブラッド・シンプル』から一貫して観る者を突っぱねる、或いは予想を裏切る形で人間のエゴと醜悪を描くアプローチはハリウッド映画のそれとは対極に位置する。

🌵脇役ジョシュ・ブローリンが死亡してからのアブノーマルな展開が、三つ巴となった主人公達の皮肉な運命を象徴させるかのような「円環構造」となっており誠に秀逸。そう、本作はまさしく『ブラッド・シンプル』のセルフ・リメイクなのである…。
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