骨折り損

ノーカントリーの骨折り損のレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
3.8
とにかくハビエル・バルデムが怖い。

変な髪型にギョロっとした目、意味不明な言動。そして、少し特殊な武器。悪役としてのカリスマ性を感じずにはいられない。

やはり悪役が魅力的だとそれだけで作品が面白くなる。彼の怖さ抜きにして、この映画は成立しない。

台詞の面白さでも有名なコーエン兄弟だが、今作は喋らないシーンでこそ演出の上手さを感じ取りやすい。追う者と追われる者、その至ってシンプルな対立構造を守って物語は進んでいくのだが、カットバックのタイミング、カットの積み重ねがしっかりと階段状にこちらの緊張を煽ってくるので、沈黙の鬩ぎ合いに息を飲む。そして限界まで達した緊張を一発の銃声が解放する。俺の心臓はもう完全に監督の掌の上だ。

エンディングにかけて、どう展開していくか先が読めないのも今作の魅力である。それだけ、こちらの期待をいい意味で裏切り続けてくれる。ただ、だからこそ終わり方を含めて、個人的には少し洒落すぎていた感じも否めない。もう少し答えらしい答えを得られる終わりでも良かったとも思った。

でも、コーエン兄弟が一筋縄でいく訳がないので、ほんの少しのベタを期待する自分がおかしいとも思う。なんだか洒落ていて、なんだか終わらない悪夢を観たい人にはオススメ。

そんな人おるんか。
骨折り損

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