あー要するにファイト・クラブね。と思ってパンフレットを読んだら案の定。
ただし、明らかにファイト・クラブのその先へ行こうとしており、その意欲に関してはすごく好印象を持ちました。
また、映画をフィクションなんだからで終わらせるのではなく、映画が現実に与える影響、現実が映画に与える影響。この相互作用から目を背けず、つくり手としての責任をちゃんと持っている点が素晴らしい。
個人的に注意して観たほうがいいのではと思うのは、黒服に傾倒していく人たちの外見の変化。そして彼らが集まる“場所”
ここをファイト・クラブではどうだったかを思い出し、比較してみると“Team 常連”の奴らがどんな人物なのかが見えてくるはず。
コロナ禍にならなかった2020年が舞台になっているという点からも今作は現実社会のパラレルワールドである。
以上を踏まえると、監督が“真夜中乙女戦争”を実行しようとする彼らをどういう人間として捉えているのか。そして映画を通して現実社会にどういった作用を起こしたいと思っているのかは伝わってくる。
バブル崩壊後に産まれ、コロナ禍を生きる令和の若者たちと彼らにモラトリアムを許さない社会。
令和の日本で生まれたファイト・クラブに僕たちはなにを見るかというのが大きなテーマなわけです。
なんだけど、全体的に分かりにくいのも確か。台詞っぽい台詞が多用され、いま見えているものに関しては説明的な割に、シーンの外にあることは極端に観客に委ねる形になっている。
そのためシーンとシーンの間でなにがあってこうなったのかがよくわからず、でも話はどんどん進んでいくから分かりにくいという現象が起きてしまっている。
台詞っぽい台詞を、台詞っぽく喋っているのもあえての演出なのであろうが、話に入り込めない人をさらに引き剥がしてしまっている要因にもなっている。
キャラや物話に感情移入できるかどうかだけが作品の良し悪しを判断する基準ではないのだが、今作は“感情移入”できるかどうかがかなり重要なためそういう意味では個人的には面白くなかった。