幽斎

アンホーリー 忌まわしき聖地の幽斎のレビュー・感想・評価

4.0
零落れたジャーナリストJeffrey Dean Morganは、取材先で出会った聾唖の少女が喋ったと耳にする。少女Cricket Brownは聖母マリアの出現を体験、病人を治す力を授かったと言う。Dean Morganは独占取材を試み、奇跡を見る為に大勢が詰めかける。だが、それは聖母マリアの御業では無かった・・・AmazonPrimeVideoで0円鑑賞。

ハリウッド・メジャーSony Pictures配給。Sam Raimiがオーナーを務めるGhost House製作、北米興行ランキング初登場2位を記録した大ヒット・ホラー。Sam Raimiがフロントだけど日本は劇場未公開で配信扱い。まぁテーマを考えれば日本のソニーの賢明な判断だと思う。私は元クリスチャンなので、本作がアメリカで受け入れられた気持ちは解るし、だからこそ日本人は統一教会に騙される。

原作はイギリスを代表する古典ホラー作家James J. Herbert著「奇跡の聖堂」早川書房。彼は聖母被昇天と呼ばれるカトリック学校出身で、「死後」をテーマに多くの作品を書いてる。映画で言えばジェット機が墜落して乗客全員が死ぬ大惨事にも関わらず、機長が奇跡的に無傷で救出された「墜落大空港」。Kate Beckinsale主演の佳作スリラー「月下の恋」等。本作は1983年「Shrine」意味は聖堂。

原作が古いので現代に置き換えてもフレッシュ感に乏しいが、最近はゴシック系の正統派ホラー(スリラーでは無い)が極端に少ないので、逆にアメリカ人にウケたと思う。原作は評価の高い作品で、キリスト教に疎くても日本人でも出前一丁の様に定番の味として楽しめる。ルーテル系の神学校に行くと聞かされる「神が教会を建てられると、悪魔はその横に礼拝堂を建てる」。聖霊は全ての虚偽と偽りの霊に反対する。

Evan Spiliotopoulosと聞いてピン!と来た方は映画通とお見受けするが、彼は「チャーリーズ・エンジェル」「G.I.ジョー」原案者。2016年「スノーホワイト/氷の王国」。2017年「美女と野獣」脚本家で知られ、本作が長編監督デビュー。演出として際立って良い所も無いが欠点も無く、手堅く纏めた手腕は評価出来る。台詞の一言一句に意味を持つ、つまりキリスト教をモチーフにした作品の中では成功の部類と言える。

ヨハネ福音書には続きが有る。「混じり気の無い神の言葉が伝える所に、悪魔は分派と騒ぎ多くの偽りの霊を連れて来る。彼らはキリストと教会の名と栄光を自分のモノにする。しかし、彼らの腹の底には偽りが有るばかり、真理も確かさも在りえない」。ソレを映画に置き換えると、不治の病を治せると聞いて彼女の住む村へ押しかける愚民たちの描写が該当するが、一見するとテンプレの様に見えて、其処には現代的な解釈も散見される。

彼らは敬虔なキリスト信者に違いないが、劇中で「神は本来の居場所に居る方が良い。地上に来ると災いが起こる」と語る。旧約聖書の神は怒るだろが、神は天に居る方が良い、誰でも「信じる者は救われる」とは考えて無い事が判る。日本で言うなら「触らぬ神に祟りなし」だろうが、原作を踏襲しつつ、上手くアレンジしてる。

今の日本にグッド・タイミング。愚民の衆を笑えない程に日本国民がカルト教団に汚染されてる事を、安倍元総理殺害事件は白日の下に晒した。大将である元総理が死んで自民党は大勝したのに、いざ自分の事に為ると宗教の関わりを隠蔽する。賤しくも天皇陛下は神道のシンボルで在る、死んで燃やされ仏として寺の墓に入る、それでも胡散臭い者に縋る人は後を絶たない。普遍的な訓話として観るべきでは無かろうか。

唐突に「真珠腫性」が出てアレ?(笑)。簡単に言えば中耳炎ですが、耳の疾患では極めて厄介モノ。鼓膜表面の皮膚が裏側、つまり中耳に入り込んで、真珠腫という固まりを形成する。白く光沢な球状を呈するので真珠腫と呼ばれる。基本的に内視鏡手術しか方法は無く、放置すると目眩や顔面神経痛で日常生活が困難に為る。自らの組織で自分の居場所を破壊する、それが何かを問い掛けてる。

アッサリ塩味感は残るが、ヴィジュアルは綺麗だし、「ポゼッション」Jeffrey Dean Morganの他にも、「ワイスピ」Jordana Brewsterの代役で起用されたCricket Brownの存在感も良かったし、「SAW」Cary Elwesも見れた(笑)、「ダイ・ハード2」William Sadlerも居たし、ハリウッド・メジャーらしく、お得感の有るキャスティング。オーセンティックなホラーとして私は楽しめた。ホラーが苦手な方にもお薦め、怖くないよ(笑)。

「悪魔が光の天使と為り輝く姿を神に似せて現わしても見破る事は出来る」ヨハネ福音書15章より。
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