ぽんぽこ

煙突の見える場所のぽんぽこのレビュー・感想・評価

煙突の見える場所(1953年製作の映画)
3.8
YouTubeで見つけました。
1953年の作品です。
戦後間もない東京の下町。         そこには、煙突があり、お化け煙突と呼ばれています。と言うのは、見る角度や場所によって、2本に見えたり3本に見えたりするからなのでした。


長屋を借りている緒方隆吉(上原謙)弘子(田中絹代)夫妻は2階の2間を税務署に勤める久保健三(芥川比呂志)と街頭放送局アナウンサー東仙子(高峰秀子)に又貸ししています。
又貸しって言っても襖につっかえ棒してる簡単な物で、プライベート感ゼロ。
緒方夫婦も、仙子に見られるし、同じ屋根の下に、行きも帰りも出入りして他人が暮らしている事が、今では考えられませんが。

緒方夫婦は貧しく、弘子が隆吉に内緒で競輪場のアルバイトをしてる事を知り、機嫌が悪くなる隆吉です。
そんな時に、緒方家の縁側に赤ちゃんが置かれており、手紙には弘子の前の夫で戦争で死んだと思っていたその塚原(田中春男)と言う男は生きており、新しい女との赤ちゃんなのでした。
おまけに戸籍謄本まであり、塚原と弘子はまだ婚姻関係がある事になっていたのでした、、、

寝ながら編み物する器用な弘子。
重婚していたのがショックで不機嫌な隆吉。
赤ちゃんは、一日中泣いてるけど、自分の子じゃないし、知らんぷりの隆吉。
弘子も夜泣きに悩まされてゲッソリ。
隆吉には責められるはで自殺未遂…。

それからは、ちょっとは協力したり見かねた2階の健三も塚原探しをしてくれました。
やっとこさ見つけた塚原は風采の上がらない男で、その癖に勝子(花井蘭子)という後妻との間にできたのが、シゲコというあの赤ちゃんなのでした。
しかも勝子とは既に離婚してるし。

赤ちゃんが重病になり、ケンカなどしてる場合じゃなく、寝ずの看病をして元気になった頃に、今頃になって勝子が引き取りに来て、情が移った弘子は嫌がったけど、勝子だって好きで赤ん坊を手放したんじゃないんです。


しばし冷静になってよくよく考える弘子。
赤ちゃんが置いていかれた事により、弘子と隆吉は振り回されて悩まされたのも事実。
ケンカになり、険悪な雰囲気にもなったけど、赤ちゃんが元気になって安堵し、心から良かったと思い幸せな気持ちを感じさせてくれたのも事実。
赤ちゃんを勝子に返す決心をするのでした。


ラスト、隆吉と弘子は、雨降って地固まるように一層絆が深まり、2階のおふたりは夫婦になるようです。

相変わらず聳え立つお化け煙突が、まとまって一本の塊に見えて、今までの出来事を示唆しているようでした。
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