樺太柳葉魚

エンドロールのつづきの樺太柳葉魚のネタバレレビュー・内容・結末

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

サマイは生活圏内にライオンがいるような田舎町?に暮らす少年。父親が珍しく映画に連れていってくれて、すっかり魅力されるのです。なんとか映画を観ようと潜り込んだのですが、すぐに見つかって放り出されてしまうのです。しかし、たまたま知り合った映写技師のファザルと、お弁当を交換条件に映画を観せてもらえるのですが。と、ここまでは予告編で予想ができる展開。サマイは映画の仕組みが知りたくて、友達と試行錯誤しながら実験を繰り返します。凄い情熱。2010年の話なので、日本の子ども達ならネットで検索するんだろうな。ネットの無い環境、裸でライオンの群れを眺める子ども達は道端で拾ったような物などを利用して、映画を知ろうとするのです。そして映画愛が高じて遂にフィルムを盗んでしまうのです。さすがにサマイ!!それは犯罪や!と叫んでしまった。心の中で。しかも結局ばれて少年院に入れられてしまう。前科持ちに!!まだ9歳なのに!! 一方、父親はチャイ売りの仕事を失う寸前。父親もなかなか悲しい過去の持ち主で、兄弟に騙されて牧場を失っている。兄弟に!! 酷い話。バラモンの生まれである事を誇りに思いつつ、駅でチャイを売り、生計を立てている。息子には真っ当な生き方をしてほしい、映画などといういかがわしい物にうつつを抜かしてほしくない。しかしライオンのいる村でどんな出世の道があるというのか。子どもの足で行ける地域にライオンがいるって結構衝撃。インドって虎もいるし、ライオンもいるのね。大自然。そんな1920年から変化が無いような地域なのに、ある日突然デジタルの波が押し寄せてびっくりですよ。いきなり映写機やフィルムが捨てられ、パソコンが現れる。ええっ?ライオンがいる地域に?とか、あんまり書くと差別とか思われそうなので止めますが。破棄された映写機やフィルムを追いかけるサマイ。しかし間に合わず、映写機は破壊され、溶かされ、スプーンへ。フィルムはバングルへリサイクルされてしまうのです。この溶かされるシーンの強烈な光は爆発のようでした。爆弾が全てを破壊するかのような。サマイにとっては確かにひとつの時代が終わった瞬間だったんでしょう。インド映画というと歌って踊ってド派手なアクションというイメージですが、どれもない。人生と向き合う抒情豊かな映画でした。
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