Jun潤

エンドロールのつづきのJun潤のレビュー・感想・評価

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)
4.4
2023.01.22

予告を見て気になった作品。
ボリウッドが放つ、現代の『ニュー・シネマ・パラダイス』。
映画好き、最近インド映画がアツい僕としては観逃せません。

インドの田舎に暮らす少年・サマイ。
サマイは学校に通いながら、父の手伝いで駅でチャイ売りをしていた。
そんな父が、4年ぶりに連れて行ってくれた映画館・「ギャラクシー座」。
父はカーストの最上位であるバラモンにこだわり、映画を低俗なものとして嫌っていたが、サマイは映画の世界に魅せられる。
父の店の売上から金をくすみ学校をサボって映画を観たり、母の弁当を代金に映写技師のファザルに映写室に入れてもらったり、捨てられたフィルムを手作りの映写機で映し出したり、ついにはフィルムを盗んで自作の映写機で作品を映し音を乗せて皆で観る。
しかし、デジタル化の波に押され、ギャラクシー座では最後のフィルム上映“ラスト・フィルム・ショー”が執り行われる。

むは〜、ノスタルジックでエモーショナルなジュブナイル・ストーリー。
サマイが魅了された映画の世界。
少年の自由な発想で、設備が何も無い中でも、光にフィルムを通して物語として映画を映し出す。
大人や世間に抑え込まれても、子供の純粋な夢と力強い行動力は留まるところを知らない。

盗んだフィルムを上映するために、情報や廃材を集めて、大人たちの真似事をして自作した、大人顔負けの映写機。
その製作工程なんかはもう『アイアンマン』かな?てくらい熱いものがありましたね。
普段劇場に行って観ているだけの僕からしたら、自分で作ってでも映画が観たいという情熱がグッサグサに刺さってきました。

大人たちの愛情もまた良かったです。
サマイに更なる映画の世界を観せたファザルや、サマイの行動を咎めない先生だけでなく、優しい母と厳しい父の愛情。
情熱だけではサマイは先へ進めなかったのかもしれません、サマイの背中を押す大人たちの存在があってこそ、サマイの物語は動き出したのかもしれませんね。

今作では描写的にも物語的にも「光」と「フィルム」が粋でしたね。
特に「光」は作品の要所要所でサマイを照らすなど十分に役割がまさに光っていましたが、それが空き瓶や虫眼鏡、鏡やスクリーンなどのフィルムを通すことでサマリに様々な色や景色を見せるという、作中で特に存在感を放っていました。

現代の『ニュー・シネマ・パラダイス』とはよく言ったもので、フィルムや映写技師との交流、故郷を発つことを迫られるということまで、リスペクトというかオマージュがありました。今作と同じくらい好きなので個人的には嬉しい演出でした。

サマイの不法侵入やフィルムの窃盗など、おそらく賛否が分かれるであろう違法行為についても、個人的には子供ゆえの過ち、合理的に考えない子供だからこその行動ということで、むしろ警察の手が及ぶ方が悔しく思うくらいでしたね。
しかしオバケの家のその後が語られないのはどうなのか。

あと邦題も気になりました。
特に『エンドロール』は関係無いので、原題そのままかカタカナ表記でも良かったのにと思ったり。

映写機はスプーンになった。
フィルムはバングルになった。
思い出や経験も違う形になってしまうのかもしれないけれど、サマイの記憶や人生には映画というものが刻まれ続けていくのでしょうね。
Jun潤

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