EDDIE

クレッシェンド 音楽の架け橋のEDDIEのレビュー・感想・評価

4.5
イスラエルとパレスチナの対立。それぞれの抱く問題はそう簡単には解消されない。本作のオーケストラは実在の楽団がモデル。各国の抱える深刻さを軽視せず互いが歩み寄る希望と厳しさを見事なバランスで描いた良作。楽器は武器ではない。

〈ポイント〉
・音響の良い劇場で堪能できるクラシック音楽はやはり最高!
・歴史的にも問題視される二つの対立国の厳しい情勢がイヤでもわかる
・対立し合うもの同士が歩み寄っていく過程を描く構成に好感
・圧巻のラスト!これを見届けるために本作を観る価値がある

〈雑感〉
予告を初めて観たときから気になっていた作品。
ただ公開館が自分の普段行く劇場ではない点と他の新作を優先して後回しにしてしまってました。
いや、でも自分の直感を信じて良かったです。
この作品は自分が好きそうという感覚があり、後回しになったものの今回劇場鑑賞して2022年の上半期ベスト10候補に躍り出るほどでした!

とある有識者の企画で、マエストロと呼ばれる名指揮者のエドゥアルト・スポルクのもとでオーケストラのオーディションが行われます。
趣旨は紛争中のイスラエルとパレスチナの若い音楽家を集めて、和平を目指すコンサートを開くというもの。
希望に満ちた企画は想像以上に困難で危険な試みでした。
オーディションで選ばれた演奏家たちは互いの母国の歴史的背景もあり、なかなか馴染もうとしません。むしろ紛争中のそれぞれの国同様にいがみ合ってばかり。
そんな彼らをまとめるマエストロは苦労の連続。しかしセラピーとも思わせるような様々な試みで彼らの距離を少しずつ縮めていきます。

ラストがとにかく素晴らしかったんですよね。色々と厳しい面も見せられる作品ですが、最後に一気に涙腺を崩壊させられます。
そう甘いものではない、という厳しさにきちんと目を向けさせつつ、あのラストにしたのは製作者側の誠意とも受け取れました。
見事な作品です。SNSでもいがみ合っているたくさんの人たちはとりあえずこの作品を観たらいい。

〈キャスト〉
エドゥアルト・スポルク(ペーター・シモニスチェク)
ロン(ダニエル・ドンスコイ)
レイラ(サブリナ・アマーリ)
オマル(メフディ・メスカル)
カルラ(ビビアナ・ベグロー)

※2022年新作映画29本目
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