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ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールドのbluetokyoのレビュー・感想・評価

3.6
たんに上映時間が短いという理由だけで見てしまいました。ザ・スミス、メンバーに兄弟がいて殴り合いの喧嘩をして解散したバンドだったよな。そういう殺伐としたシーンが出てくるものと思っていたが、思いのほか優しく繊細な音楽が多かった。それに、殴り合いの喧嘩のバンドは、ザ・スミスではなくてオアシスだった。
意外と面白かったし感動すらしてしまいました。帰りにさっそくレンタル屋でザスミスを借りてしまいました。どんな名曲なのかと期待しながら。うううむ、正直言って微妙だ。年代からだとマドンナが出てきたころだ。映画の中でマドンナのボーダーラインというのが一発でわかったけど、でも、ザスミスは覚えていない。たぶん、この映画を見なかったら聴くことはなかっただろう。音楽に詳しくないけど、思うに、ザスミスは歌詞が凄かったのではと思う。だから、日本では歌詞がわからないので、ザスミスがいかに画期的なのかわからないのだ。その歌詞というのは、日本で言うと、フォーク、ニューミュージック、演歌、中島みゆき、ちょっと違うか。とにかく、歌詞は、個人的で、繊細で、若者の本音、敗北者、という感じなのだ。弱い自分をさらけ出している。聞く者の代弁者なのだ。
たしかに、たとえば、ボブディランでも、ヘビメタでも、ポップスでも、ブラックでも、歌詞は、強い、明るい、幸せ、やったー、勝つ、肯定、そういうものだ。つまり、現実逃避なのだ。現実逃避で済む場合はそれでいいのである。でも、それではもはやダメな場合はどうなるのだ。現代はそうだよな。
ショップリフターズは万引きという意味でザスミスの曲でもある。もちろん、万引きしろ、と言っているわけではなく、新自由主義経済への反発である。万引きしているのは、クレオである。クレオはザスミスのファンなのだが、解散というニュースでショックを受けている。レコードショップの店員のディーンはクレオが好きなのでなんとかしようと思うわけである。そこで思い付くのがラジオ局を占拠してザスミスの曲を流し続けることなのだ。
一方、クレオは明日陸軍に入隊する友人を励ますために友人でカップルの二人とあちこちのパーティーに行く。そこで、様々に、ザスミスの歌詞のような、若者の壁にぶち当たってる感が出てくるわけである。クレオもフランスに友人がいて、大学に行くのだ、と言っているが、実は、スーパーでフルタイムのレジ打ちをやっているだけなのだ。たぶん、一生、レジ打ちなのだ。新自由主義経済の下ではそれが現実なのである。パーティーを巡っているうちにラジオからザスミスが流れてくる。若者たちは、ディーンがラジオ局を占拠したことに気付き、励ますために集まってくる。その中で、ディーンはついに警察に連行されてしまう。ヘビメタしか流さないDJも、だんだん、現実がわかってきて、ザスミスに理解を示してくる。警察に連行されるシーンは、なかなか、いいシーンではある。
翌日?、クレオが警察にディーンを迎えに行き、二人の気持ちが通じ合う。そこで終わりである。
途中、クレオたちはパーティー巡りをしているだけなので、退屈になってしまう。もう少し、ストーリーに起伏があればよかったのかもしれないけど、それなりには意外と面白かった。
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